書評 〜 スター主義経営

「スター」と「経営」いう言葉の組み合わせに違和感を感じて、手にとって読んだ。何故ならば、スター・プレイヤーに頼ったチームは上手くいかないだろう、と思っていたからだ。

読み始めてみると、本の内容は違っていた。「スター」の定義は、「プロフェッショナル」であったのだ。「スター」は、会社(チーム)のことを考えて行動し、お客さんのために働く人であって、利己主義に走る人のことではない。

会社がビジネスを成功させるためには、優れたリーダーシップを取れる人材が必要であり、そういう人を”スター”と呼ぶならば、確かにその”スター”の存在も必要である。そういう人をつなぎとめる経営というのが必然的に課題にもなる。”スター”をつなぐ会社とか、”スター”そのものが”スター”をつなぐ、そんなことも綴ってあった。


さて、チームのことを考えて動く人が評価される仕組みは重要だ。そして、私たち自身が「スター」候補だとして、どうやったらそうしたリーダーシップが養われるか、について本の内容は進む。

この本は、比較的フラットな組織において、リーダーが果たすべき役割や行動についてのヒントが散りばめられている。PSF(プロフェッショナル・サービス・ファーム)という会社の形態について触れてあるが、分かりやすい例は弁護士事務所だろうか…。金融でもゴールドマンサックスが例に出されているように、多くの外資系企業はこの範疇に入ると思われる…。

この前置きをここではさんだのは、伝統的な日本の会社に多い、垂直的な組織においては、考え方が少し違うかもしれないからだ。以下は、本書と同じく、プロフェッショナルがフラットな組織の中で、動くためのポイントを紹介していきたい。


スターまたはパートナーと称される人たちは、そうしたフラットな組織の中で、人を支配するという観念ではなく、人に影響を及ぼすという意味で、リーダーシップを発揮する。そのためには、周囲から人間として信頼されないと、成功することはない、とある。

自分を理解している人、人生と仕事との調和を図る努力をしている人は、士気も生産性も高い、とある。『履歴書ではなく人生を作ろう』という章があり、とても印象的な言葉に映った。


自分自身のキャリアを振り返ってみた。仕事は、そこに向かうものがあるからこそ、自ら向かっていった。一つ一つ高いところに上がってより大きな仕事をしたい、という動機が自分を後押ししていた。

一方で、いくらか高いところに登ってみたところで、そこに踊り場があったり、高原が広がっているわけではない。坂道の連続なのだ。平たく言うと、仕事はより忙しくなり、より目標も高くなっていく。そんな場所で、自分を見失わずに仕事の士気を維持するというのはとても大変なことだ。特に、相談相手や、目標とする人の数が減ってくるような状況においては…。

そんな風に考えていくと、やはり「人生を作る」というのは、忙しい仕事人生がそこに「既にある」中で、そして「今後も黙ってもあり続ける」中で、大きな目標であり自分を見つめ直すきっかけの言葉でもある。

この本では、引退戦略はどんなに早く考えても早すぎることはない、とも書いてあった。引退というのはまだ先のことなのかもしれないが、今の仕事の次に何をやって、そこにどういう価値観を込めるかというのも、自分を見つめ直すのに役立つと思った。

スター主義経営―プロフェッショナルサービス・ファームの戦略・組織・文化

スター主義経営―プロフェッショナルサービス・ファームの戦略・組織・文化




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