今こそマクロ経済の理解が必要な時!

藻谷さんの「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)」を読みました。とても良い本でした。書評は改めて記事にしますね。

マクロ経済は学生のときに勉強し、その後証券アナリスト試験でも復習した。しかし、それらの時代は理屈を覚えるのが精一杯で、試験もそれで通ったということに過ぎない。経済学を修了しておきながら、理科系だった僕は、そのときからしばらく技術屋として、計量経済を使った分析を銀行で行った。

日本株のファンド・マネージャーになってからは、経済指標を見るという点で、マクロ経済の視点は常に頭にあったけれど、景気循環を意識する以上のことはなかったと思う。既に他のところで書いたと思うが、年金運用の世界であっても、マネージャーの評価は四半期(3ヶ月)ごとで、目標に達しなかったり、競合他社比で悪い成績だった場合は、お客さんだけでなく、社内からも責めにあう。

経済環境の認識や潮目の変化に敏感であることは大事だけれど、賭け事で例えると、大きく賭けて大きく負けることだけは避けないといけないから、市場の流れを見ながら小さく賭けるという方法になることが多い。それをファンド・マネージャー個人の裁量で行う場合と、チームで体系的に行う場合(ご存知の方はクオンツ運用というやつです・・・)があるけれど、賭けの大きさとプレーヤー全体の動きを読むという点では共通だ。

法人同士が行う資産運用の世界では、利益(株主資本に対する配当やリターン)を求めていくことが最大公約数の人たちを幸せにするから、運用成果を評価する期間は短期化していくし、勝ち負けだけで判断することに陥りやすい。かと言って、負けている運用者が何を叫んでも聞いてもらえない世界なので、いくら理屈を並べても、かえって見苦しく映る世界でもある。

話が脱線したが、マクロ経済とはそういう付き合い方をしてきた訳です。なので、デフレになっても、デフレに強い企業を選んだり、内需が駄目でも輸出が多い企業を選ぶということになる。

しかし、そうして時間が流れても、依然としてデフレは解消されず、戦後最大と言われた景気がそこにあったという感覚もない。景気循環はどこへ行った?

僕はこれから、経済学者を目指そうとも、政治家になろうとも、している訳ではないけれど、今の状況こそ日本の実態に目を向け、そして自分の生き方や仕事での活かし方を考えていきたいのです。ちょっと遅すぎた感じもしますが、国の借金がこれほどまでに話題になったことは最近なかったと思うし、自分たちの(お客さんの分も当然含みます・・・)資産をどう運用したらよいかについて、これまでとは違う感じ方もできるようになっておかないといけないと思う。どう違うか、って?それは、先入観や過去の事例にとらわれるのではなく、あらゆるシナリオに対応できる柔軟さを持つということです。

話をマクロ経済に戻すと、マクロ経済ほど、理論と実践の間に距離があるものはないと思ったのです。学校では理論を教えてくれる。しかし、僕らが習った理論は、戦後の経済成長から景気循環(景気の山、谷というやつですね)がはっきりと見れる時期における政策論(金融政策と財政政策)で、今の時代にどう応用したらよいかという点は教えてくれません。

時間に任せて、経済学者や評論家と言われる人たちの著作にあたっていくと、複数の論理があって、それぞれの人は自論を展開しながら他をけなすばかり。議論をするのは良いことだけど、ちょっと節操がないなあ〜と僕は直観でも主観でも思います。一つ断っておくと、藻谷さんもどこかで嫌な思いをしたのだろうけど、彼の本の書き方もいただけない。講演をまとめたものという点を差し引いても、せっかくの主張の良さが減殺されてしまいそう。そういう学界の雰囲気を知るのには良い題材かもしれないが・・・。

いまいちど、どういう見方を今すべきなのか、どういう人の意見を支持すべきか、そして企業としてできることは、個人としてできることは(自衛という点も含めて)何か、を今後このブログでも考えていきたいと思っています。マクロ経済学に触れることのなかった人にとっては、難しい話題に映るかもしれません。そのあたりも、スペースと時間が許す範囲で、何かできたらと思います。




こちらへも遊びに来て下さい。→金融の10番は日本人に任せろ!