デフレ経済下の資産運用術?

デフレ経済は構造的な変化をあらわしている。労働人口の減少(少子&高齢化)、長い消費社会の結果行き着いた充足感、将来の不安に備えた貯蓄志向、など。このブログでも、そうした見方を主として書評を通じてなぞってきた。

現在か近い将来が歴史的な転換点だとすると、工業化によって経済的に豊かになってきた(経済)先進国化の時代は過渡期を迎え、新しい時代への入り口に来ている。人によっては、IT化とグローバル化によって既に新しい時代に入っていると言う人もいるし、これからは社会的な先進国化を迎えると言う人もいる。どちらもその通りだろう。

ポイントは、作って売る時代は既に新興国にとって変わり、日本を含む先進国は次の時代をさまよっている。極論を言うつもりはない。例外的な産業もあれば企業も存在する。ただ、平均的な姿について言うと、新しい価値か他を圧倒するような独自性または魅力を提案する企業でもない限り、キャッチアップ型の新興国にとって変わられる。かつての日本がとっていたように。

こうした時の流れにあって、僕らは何を学び、どう行動すべきかはまた別の機会に考えてみたいのだが、先日紹介した堀さんの本にもあったように「自ら考える」ことは最低限のたしなみだろう。

さて、ここから資産運用について話を転じてみる。デフレの勝者は、新興国の企業や、ユニクロなどの一部の企業、そして独自の技術やサービスで人を魅了する会社だと思う。もっとも、ユニクロを例に挙げると、株主としても消費者としてもその業績と商品(低価格)は好ましいものだが、日本で雇用する代わりに海外で雇用をするから、マクロ経済的(日本の税収と消費)的には好ましくない。これは、他の製造業でも多く見られる現象で、そうした企業が果たして社会的か(日本という国だけを見ての話だが・・・)という議論もある。

機関投資家(プロ)の資産運用では、国ごとにベンチマークを設けて、その通りに運用するパッシブ運用か、そのベンチマークから少しずらしたアクティブ運用が行われている。日本株の場合は、東証株価指数TOPIX)をベンチマークにするケースが圧倒的で、1700を超える日本の一部上場企業が株価指数を構成している。

なぜベンチマークが必要かというと、理由は2つ考えられ、1つは年金などの巨額の運用資産を運用する場合に、日本株に何割、外国株に何割という比率(アセット・アロケーション)を決めるときに、日本株を代表する指標が必要だから。昔は、今ほどグローバル化が進んでいなかったので、この考え方が当てはまったし、国ごとに産業構造や成長ステージ、そして景気循環が異なることがあったので、こうした考え方が論理的でかつ扱いに優れていた。もう1つは、資産運用業者を評価する際の、まさしくベンチマークである。

前者のアセット・アロケーション上のベンチマーク論については、昔からトヨタフォルクスワーゲンは同じ土俵で競っているから、意味がなくなってきていて、グローバル株式にした方が良いという議論があった。実際にそうした運用を施している人たちもかなりいるが、それでも世の大勢は国ごとのベンチマークを意識するという運用である。

しかし、ある程度右肩上がり(本日は論じないが、株式のリスク・プレミアムという考え方によるもの)の経済を前提とする、もしくは景気循環が起こる経済においては、国ごとのベンチマークは妥当性があると思うものの、先進国の多くではこれからデフレが長期化または恒常化し、デフレ環境では収益をあげられない企業が相当数出てくると予想される。

プロの運用は、特に年金基金などの顧客サイドにおいて、大局的なものの見方を変えることは難しいと思うから、運用機関もなかなか大胆な提案ができない。そうすると、良かれと思って使われているベンチマークそのものが、構造的に破綻しないかという危惧を抱いてしまう。

少し前に、野村がファンダメンタル・インデックスという運用を提案したが、それはまだ既存のベンチマークに勝つためのアクティブ運用の提案というかわいいアイデアで、もっと大きな変化を試す余地があるのではないかと思う。

なんだったら、シナリオに賭けても良い。グローバルにデフレ経済が進展するという前提での超アクティブ運用と、インデックスから大きくぶらさない既存の運用を組み合わせることである。超アクティブ運用と書いたが、既に一部のヘッジファンドなどは、そうしたシナリオに賭けているのではないか。もともと彼らの運用はベンチマークとはあまり関係がないし。

個人投資家にとっては、より難しい時代になるのかもしれない。それはチャンスの裏返しでもあるけれど。多くの企業がデフレに苦しんでいるところを見ると、自分の会社ではできないデフレ商戦や反デフレ戦略を採っている企業に投資することは良い分散投資になる。




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