大きな政府と小さな政府に見るわれわれの選択

大きな政府」と「小さな政府」を論じる場合、(1)国民あたりの税金を対GDPで見る(租税負担率)のと、(2)政府支出を対GDPで見る、考え方があるそうです。

(1)も(2)も「1年間では」というフローの数字です。一方で過去の積み上げである、ストックの見方として(3)国民あたりの政府資産や(4)国民あたりの政府負債もあるようです。

経済で言うところのフローやストックとは違いますが、(5)国民あたりの公務員の数(すぐには人数は変わらないのでストックの概念かな?)というのもあります。

日本を他国と比べると、フローで論じる場合は米国に似ていて小さい数字なので「小さな政府」と言えるが、資産や負債のストックは高いので「大きな政府」と見てとれるようです。ただし、公務員の数は少ないので、その点では「小さな政府」です。

数字だけを比べても実感が沸かないことが多いですね。例えば、スウェーデンでは、負担が給料の××%で、その結果、○○の行政サービスが得られます、という例から想像しはじめるしかありません。機会があれば、そこに住む人の意見を聞きたいですよね。「で、そっちの暮らしはどうなの?」って?

話を戻します。まず、「ん?」と思ったのは、日本は少ない公務員で大きな資産と負債を抱えている(他国比)。それだけ、公務員の責任が重いと言えます。しかし、見方によっては「権限が大きい」とか「大きすぎる」と言うことがあるかもしれません。構造改革という言葉がありますが、「政府のスリム化」や「必要なところにもっと資源(人的)配分を」という議論は、この観点のものだと思います。

大きな政府か小さな政府のどちらが良いかというのは、国民がどちらを望むかによる訳ですが、このコンセンサスを取っていくことは本当に難しいですね。しかし、いずれの場合でも、政府による政策と、その執行をする行政との間に非効率があると、国民は国を信用しなくなってしまうでしょう。いっそのこと、「無駄使いするくらいなら政府は小さい方が良い」という意見に圧されてしまうかもしれない。逆に、政策と執行が効果的に結びつけば、そのうちのどの部分までを国がやって、後は民間(民)がやる方が効果的か、という基準で議論していけば良い。

以上のことは、綺麗事を並べているに過ぎませんが、各論を戦わせる前に、これらの価値判断について僕たち一人一人が考えないと、と思いました。

政策の中身について僕が気になっているのは、教育と高齢者福祉です。教育は、政策というより国家戦略として考えて、それを国と民が押していく形が必要だと思います。議論は飛びますが、大学の試験が簡単になっていたり、海外への留学が減っていたり、という話から、大学生に限りませんが、学生の質が低下していると連想されます。また、企業が契約社員を増やして正社員を減らすことから、昔は多くの人が受けられた従業員教育が減っていると言うこともでき、今後社会人の質も低下することが懸念されます。この問題に立ち向かうには、教育段階から手をうつべきだと思います。

一方で、高齢者福祉は、少子高齢化社会が今後さらに進んでいくのは確実なので、負担の大きさに安心の大きさが見合うかどうかは、極めて重要です。税制・社会保障制度を通じた所得の分配は政府の仕事で、今ホットな話題ですね。所得の分配という言葉を使いました。これは、高所得者から低所得者という分配もあれば、今の自分から未来の自分へという分配も含みます。

いずれも、「どの程度までやるのか?」という規模・程度の内容次第で、政府の関与度合いが変わってきます。日本については、これまで見てきたように、教育・福祉ともに不安に思う要因が多いので、しっかりした戦略とそれを効果的に実行するために、ある程度の規模が必要だと思います。ではどの程度なのか?これについては、すみません、僕も勉強不足でまだ分かりません。

しかし、今作っている橋やトンネルが、仮に人口が減っていく日本において本当に必要なのか、と思う場面があります。従来型の公共工事が、別の支出に変わっていくことを真剣に考えると、政府の大きさという問題は、政策の選択と深く絡む問題です。当たり前な意見なので言うのは恐縮ですが、政府の大きさについて語る前に、僕らが望む社会やその選択肢について考えを深め、どういう中身でどういう大きさに持っていきたいかを描くことが大事だと思うのです。


【編集後記】
週末に静岡に行ってきました。駿河湾で取れた新鮮な魚をた〜くさん食べてきました。お勧めのお店などが分からず、いつも雰囲気で選ぶのですが、いまのところ満足度かなり高いです。
御殿場から沼津に行く途中に第2東名の工事箇所を見ます。確かに、あの区間の地形はかなり長いアップとダウンがあって、渋滞も起こりやすいのでしょう。僕は、第2東名の是非は分かりませんが、少なくともこの週末の渋滞は大変でした。しかし、あとン十年してドライバーの数が減っていくと、どうなのでしょうねえ?




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