Nスぺ〜借金はこうして膨らんだ

少し前に放映されたNHKスペシャル862兆円 借金はこうして膨らんだを録画したままになっていたので、ようやく観た。

862兆円はGDPの180%に相当するという。これは、先進国の中では群を抜いており、昨今では日本がギリシャのように財政破綻するのではないかという懸念が起きている。

国の借金である国債の95%は、日本の投資家によって保有されているから問題ないという議論はあるが、それにしても国の借金がGDPの180%もあって、しかもそれが増え続けており、国債によって借金が増え続けているという体質そのものは少なくとも問題だ。

それに、買い手である日本の投資家(これは個人というより、銀行や郵貯などが主であるが、元をただせば個人の預貯金である・・・)が買い支えられなくなったときに、何が起こるだろうか?日銀に買わせれば良いなどという議論もあるが、いずれ銀行が国債を投げ売りし、日銀の資産も目減り、その負担は最後には国民へ、とはならないと言い切れるだろうか?

いずれは、年金を含む社会保障や行政サービスの一律カット、税金や社会保障費の値上げ、医療費のアップなどが一斉に起こるだろう。いま、ギリシャアイルランドで起きていることである。

本題であるNスぺは、「なぜこうなってしまったか」という回顧録を、赤字国債の発行をやむなく受け入れた旧大蔵官僚の証言録や政治家へのインタビューを通じて、紹介している。ここで「証言録」とは、官僚(時の事務次官)が退官するときに、非公開を前提にして、本音を口述筆記した対外秘の資料である。

そもそもその資料がなぜ公開されるに至ったかは知らないが、退官するときに「こうすれば良かった」などという記録が行われること自体、違和感を感じずにはいられない。事務次官の任期は2〜3年しかなく、しかも事務次官が上がりのポストだから、常識的に考えればまともな仕事はできないだろう。まるで、それを見越して、証言録を作るという仕組みがあるような気がしてならない。証言録の正式名称は、「日本の財政史」かそのような名称のもので、名称だけがもっともらしいのが、何とも悲しい。

「なぜこうなってしまったか」の要因は複数あるようだ。僕なりに列挙してみると:

  • 高度成長を達成したあたりで、社会保障の充実が叫ばれたが、予算の裏付けが十分ないまま政策が先行した
  • タブー視していた赤字国債の発行を前例として作ってしまった
  • 景気対策としての財政支出公共投資)が、予想に反して効果的でなかった(右肩上がりの経済成長の経験が判断を鈍らした)
  • 消費税導入や税率アップの国民理解が得られなかった
  • 選挙対策として税制改革が遅れるどころか、減税すら行われた(その減税による景気対策効果はなかった)
  • 不況期の政権が不安定だったため、腰を据えた政策立案や決定が行われなかった
  • 官僚、政治家ともに、財政問題について責任ある行動が行われなかった(長続きしなかった)

言い訳は探せばいくらでもあるものだ。このNスぺを観ても、残念ながら何も救われないし、将来の展望が拓けるものではない。

しかし、多くの政治家が言う「都合の良い話」は、多くの場合、将来にツケを回しているだけであることは言える。僕ら有権者は、そんな都合の良い話に耳を傾けるのはやめ、現実的な選択をしていかないとならない時期にきているということなのだろう。

少し乱暴な意見を言うと、借金を背負わされている現役世代以降は、一票の重さが負担分だけ多くても良いくらいだ。問題の現実に目を向け、少しでも早い時期から修正をしていかないと、借金はただただ増えるだけだ。Nスぺによると、1秒間に百ン万円もの借金が増えているそうだ。

学校あたりでも、家計簿の勉強とともに、国の収入と支出の現状や、税収を上げるための政策にはどんなことがあるか、経済成長を上げるためにはどうしたらよいか、という基本的な考えを教えた方が良いと思う。

経済政策についても、かけたお金がどれくらいの効果になるのか(いわゆる乗数効果)、その結果、いくら税収として帰ってくるのか、という概念と過去の実績くらいは教えた方がよい。いくら、需要と供給が経済学の基礎だからと言って、経済学の導入だけを教えても、生活の知恵にはならない。政治経済学というのは、そもそもそのための知識ではなかったのか。

教育は国の管轄なので、自己否定するような教育は難しいと思うが、そうしないと国民の理解を得るなんでことは、末代まで行なわれないだろう。


【編集後記】この週末は、腹痛で寝込んでいました。疲れがたまっていたようです。おかげさまで、たまった録画を消化し、サッカー代表戦も最後まで観ることができました。
アジア杯の優勝は、素晴らしい結果でしたね。決勝戦は、歯痒い展開でしたが、今の日本ができるベストの戦い方ができたのでしょう。経済も政治も、現実をみて、したたかな戦略があるべきだと思います。
元浦和のオジェック監督率いるオーストラリアは、個人技は脅威でしたが、攻めは単調でした。オジェック監督と言えば、万年最下位だった浦和を強豪チームに引き上げた監督で、僕にとっては夢を叶えてくれた監督でした。しかし、当時のサッカー・スタイルはシンプルで、3バック、カウンター攻撃では強いが、4バックにした途端に勝てなくなったという記憶があります。この日は、チームも布陣も違うとは言え、相変わらずの采配ぶりでしたね。




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