書評〜イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマ」C・クリステンセン著(玉田俊平太監修、翔泳社)を読んだ。2000年に出た改訂版の訳本で、帯は「過去の成功体験こそが企業自己変革の足かせとなる」とある。オレンジの帯が購買意欲をかきたてる本である。

僕の勤める会社では、しきりにイノベーションという言葉を使ってます。もともと学究的な文化がある上に、勘や思い込みに依存しないような投資戦略を作ることが、仕事の価値として共有されています。この会社ならびに僕らのチームは、今までのいろいろな戦略や工夫、またどこからともなく出てくる変わった視点の議論が、行われてきました。そのうちの幾つかは、まさにイノベーションという言葉の如く、結果を出してきたのですが、これが持続できるのかどうか、そのためにはこれからどうするか、という問題意識は深まるばかりなのです。

この本では、成功した企業(イノベーションを起こした企業)がいかに次なる破壊的技術(イノベーション)を産むことに失敗するか、そうした技術に投資することに失敗するか、について語った本です。一例では、成功した企業は顧客の声を聞きながら、より高性能な技術(持続的な技術)の開発に努めてしまうがゆえに、小さなマーケットや、単純ではあるが低価格で便利をもたらす技術には、焦点をあてない傾向がある、とあります。このことがまさにジレンマである、と。今の自分にヒントを与えてくれます。

イノベーションという言葉は格好が良いし、新しいことは何でも是とする流れはありますが、それをどう果実に結びつけるか、あるいはどういう形で新しい市場を作るか、というもう1歩深い視点まではなかなか到達できないということなんでしょうか。勤勉に顧客の話を聞いたり、投資の意思決定を会社の規模に合わせて行うことで、逆に新しいマーケットを創出する機会を失うことをどう思いますか?事例を学ぶとなるほど、と思うのですが、いざ自分でそれを実行、特に組織的に、となると、大きな課題です。

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)



【編集後記】
今日はロンドンとの電話会議があって、大残業です。と言っても、夕方力を出し切って疲れてしまったので、7時には家に帰って仮眠をし、家で仕事をしていたので元気バッチリ。でも明日の朝は6時半出勤なので、ちょっと憂鬱。





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