書評〜When genius failed...「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」

仕事帰りにスタバに寄って、読みかけだった「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」ローウェインスタイン著(日経文庫)を読み終える。原書ではWhen genius failed。天才たちは何故誤ったのか、というタイトルである。

僕の仕事もファンドの運用なので、この本はなかなか興味深い、というより生臭い。最近、世間ではサブプライム問題など取り上げられ、一部では信用収縮が起こっているような話もある。これらから連想されるのは、98年に起きたヘッジファンドの破綻劇で、その裏側を知らないでは済まないと思った。物語仕立ての本なので、あっと言う間に読んでしまった。当時の状況がいかに凄まじく、また、歴史は理論では起こり難いことがあっさりと起きてしまうことを示している。

なぜここで「天才」という言葉が出て来るかと言うと、LTCMという名のヘッジファンドは理論派、しかも実務ならびに学界で名を馳せた人たちが集まって運用していたファンドだからである。この本ではいかに彼らが失敗を犯すか、という疑問を投げかけ、破綻という結果に至る様子が書かれている。

理論というのは金融に限らずいろんな場面で使われているが、特に経済の分野だと、いかに詳細を捨象して一般化するか、が理論構築の鍵である。ということは、その捨象された部分に危険が潜む訳で、この本はそこに光を当て、こうした基本を鮮明に思い出させてくれる。僕の場合は、読み終えた後の爽快感は一切なかったが、面白い本であった。

それにしてもこの日経文庫というのは、昔ハードカバーでなかなか手が伸ばせなかった本が文庫になっている。値段も重さもお手頃で、かなり充実したラインナップとなっているので、出張のときのお供にでもしてみたいと思う。

最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫)

最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫)


【編集後記】今日は土曜日。いつもの通り英会話に行って、その後、残念ながら会社へ行ってたまっていた仕事をただ片付ける・・・。行く傍ら「休日の最悪な使い方」だと思い足を進める。どうせ休日に仕事をするなら、たまっていた仕事ではなく、何か閃いたり新しい仕事のための準備に充てたい・・・。




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