現場で活かすコーチング〜リーダーのスタイル

今日の失敗談。部下に対するコミュニケーション・ミスです。誤解を与えるような言い方をしたのです。内容が伝わらなかった上に表現もきつかったそうです。幸いに、部下の方から本意を聞いてくれたので、自分の方に問題があったことに気づき、仕事はうまくいきました。

言い訳に過ぎないのですが、この数日の間、出張の準備のために、いろんな人との会議を短い時間に詰め込んでこなしてきて、その中で幾つかの課題は少し強引に整理したり進めたりしてきました。その強引さが、部下の動機や考え方をまずは尊重すべき場面において、いたずらに作用したのでしょう。僕がその場面で使うべきリーダーとしてのスタイルに合わなかったのです。

リーダーとしてのスタイルには複数があり、それぞれのスタイルが機能しやすい場面があるので、使い分けられるようになっておきたい、と『Leadership That Gets Results』(Daniel Goleman, Harvard Business Review 2000)は案内しています。

1例としては、緊急時、事故の対応などは、権威的あるいは方向性を強力に押し出すリーダーシップ・スタイルが機能しやすく、人を育てる場合はコーチング・スタイルが機能しやすい、ということが言われています。

僕は、普段では、コーチング・スタイルやAffiliative(協力的)と言われるスタイルを取ることが多いです。今日、失敗した場面では、普段のスタイルのままで良かったはずなのに、明らかに「権威的」なアプローチ、考えを一方的に押し付け、結論を急ぐかのように早口で話す、という方法を取ったのです。きつい言い方というのは心象の部分ですが、あいまって「何故、そういうやり方をしたのだ?」という叱責に似た感情が伝わる一方で、部下がその判断に至った情報を確認するのを怠ったのです。これでは、言われた部下もびっくりするだけでなく、内容をとらえるので精一杯だったでしょう。

コーチングの手法には、自分が話すのではなく、質問を通じて本人の考えを言葉で得ながら1つの方向を明確にする、場合によっては導く、ことが行われます。例えば、いつも頑張っているけれど自分で仕事を抱えてしまい、結果チームに迷惑をかけている部下に対し、「忙しいからと言って自分で何もかも背負ってしまうと、あなた(部下)の部下(部下の部下)はどう思いますか?」「では、どうしたらよいと思いますか?」という質問をかけていきます。

相手に話してもらうことで、自覚を促し、かつ理解を強くさせるというものです。人から言われて「なるほど」と思うことより、質問された内容に対して答えていくうちに「そうか、なるほど」と思うことの方が、自分の言葉を使って発する分、理解が自発的に進みやすい気がしますよね。

忙しいと、相手への質問の段取りができないし、結論を急ごうとするあまり自分の言葉が足りなくなることがあります。忙しくなることは避けられませんが、リーダーとしての重要な役割の一つを、このようにして阻害してしまいます。
僕が出張準備で最近没頭していた作業は「決断」と「実行」いう役割。「決断」「実行」をこなすときは、忙しさは障害にならない気がします。むしろ、いろいろな情報を短時間で処理するという点で、機動的には良いかもしれません。しかし、物事が長期に及ぶ役割、特にチームや人を育てるという役割になると、自分の忙しさが相手に考えさせたり学ばせたりする機会を奪ってしまう可能性があるのですね。

1年半前に、とあるリーダーシップ・トレーニング・コースで学んだはずだったことの1つです。忙しく仕事をし続けることの怖さを感じました。学んだことがすっかり抜けてしまったのです。こうした弊害が知らないうちに大きくなっていくことはさらに怖いことです。




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