イノベーションに向いたチーム〜「イノベーション、破壊と共鳴」
山口栄一さんが書いた『イノベーション、破壊と共鳴』を読みました。この本の帯には、『イノベーションのジレンマで見逃したことこそが…』、とある。気になって買った本です。
かの有名な青色発行ダイオードの開発について、各社がどのように対応してきたか、という実例部分はかなり面白い。そして、本の終盤では、いろいろな提言が書かれているが、それらは示唆に富んでいて読み応えがある。
イノベーションが上手く行われるためには、「暗黙知」と紹介される「こうかもしれない」の組み合わせが必要だそうだ。ただし、その組み合わせを、単に体系化したり表現するだけでは駄目で、同じ目的を持つ、異なる個性や研究分野の人に”共鳴”させることが大事なのだと。イノベーションのジレンマよりも1つ座標軸を加えたものかな、と思った。
”共鳴”という言葉が意味することは、ここでは具体的に伝わりにくい。しかし、それは、今僕が目指しているものと同じだと感じた。このことは、個人個人が取れる行動だけでなく、次に示すように、組織や場としての特徴とも関係がする。
一般には、「暗黙知」と言われる「知恵や考えを出し合う場」は、なかなか持つことができない。また、この本の指摘が鋭いと思ったのだが、組織化された優秀な人は「暗黙知」を体系化・形式化してしまうので、そこで思考が止まってしまう、そうだ。つまり、いかに組織として、新しい考えに貪欲で、議論に柔軟であり続けることは難しい。敢えて違う角度から議論をしてみるなど、日頃からどういう場を作ったらよいか、考えさせられる本だ。
ある章では、2つの研究都市、つくばとフランスのソフィア・アンティポリスが対比されていてこれも面白い。アンティポリスには信号がほとんどないそうだ。不規則な道路からなり、人々は自然に接することができ、芸術家を含め様々な分野の人が住んでいる。一方のつくばは均質的だ。街は直線の道路で構成され、信号が規則正しく交通の流れを制御する。工学系の研究者が多い街である。どちらがより創造性を喚起しますか?という問いだ。
ちなみに、今これを書いているカリフォルニアは自由であって、いろんな文化や専門分野の人とも接することができるという意味では良いだろう。実際、シリコンバレーはこの土壌で生まれた。東京も、街としては混沌さを持ち、決して画一化された街ではないはずだ。しかし、日本人は比較的均質化されやすいので、注意しないといけないのだろう。
- 作者: 山口栄一
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2006/02/01
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