質問力〜会話の流れから視点を与える力

今回の出張で行う会議は、大勢が集まるカンファレンス形式の会議ではなく、今やっている仕事に関してプロジェクトを立ち上げたり、今後のビジネスの方向について話していく、多数の会議からなるものです。東京から来ている人は僕だけで、キーパーソンと少人数で、グループや主題を変えながら話していきます。こういう形式ゆえに、基本的には僕が話したいことを持ち出して、話し合いが進んで行きます。米国に来る前に、予告編的な議論をしているケースと、初対面でいきなり話すケースといろいろあります。

一般的に、大抵のミーティングは、話したいこと、説得したいこと、達成したいこと、があると思います。あるいは議論で何かを導き出そうとする際に、自分の考え方とか、自分の立場からこのようにしたい、というバイアスもかけると思います。仮に、会議で、中立的かつ良い解決策を導き出したいと思っていたとしても、自分が事前に少しでも調べたり、考えをまとめたりすると、どうしても自分の考えに惚れてしまいます。個人差もあるかとは思いますが・・・。

一般に、「良い」とされる議論では、お互いのゴール、ビジネスのゴールを認識した上で、それぞれが制約を考えずに議論することが求められます。つまり、自分の立場にこだわらずに意見を言うことが求められるのです。この議論のルールとも言える「議論に対する姿勢」を、会議の最初にしつこいくらい言うことが大事なのですが、会議の進行役(自らの場合も含めて)が言い忘れたり、言うという発想がないことがあります。増してや、議論の相手がいつも会っているメンバーだと、議論のルールを忘れることも多いのです。

今日も、とあるミーティングで、僕がビジネスの代表で、社内弁護士の人に意見を求めるという場面がありました。僕は、自分なりの仮説や情報に基づいて質問をしていきます。いろいろ話していくうちに、議論の展開に手詰まり感が出てきました。そのとき、「これはおそらく、自分の聞きたいこと、調べたいこと、考えの拠り所の論理に何らかの誤りや偏りがあるのでは?」と感じました。相手は忙しい人です。僕もわざわざ東京から米国に来ている身です。これを逃すと、次に議論をする機会はいつになるか分かりません。すかさず、

「いろんな制約や立場を考えずに、もしあなたが私だったら、何から手をつけますか?」

という質問に切り替えました。この質問は、会話の間を埋める以上の効果がありました。自分が、自分の持つバイアスから解き放される意味で、良かったのです。

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最初に、その質問から入るのも「あり」だったかもしれません。しかし、そうすると、自分が何を問題としているかが相手に伝わらないかもしれません。ある程度の質疑応答があった上で、「それまで問題としていた議論を全く違う角度や立場から見つめなおしてみる」、そうしたきっかけを作る質問というのはとても大事だと思いました。

こうした質問をひねりだすのに得意な人が僕の周りに何人かいます。いつも、自分が議論に参加しながら、同時に少し離れて鳥瞰しているのはすごいと思います。

僕の場合は、結論を焦ったり、時間の制約を意識すると、いつでもできるとはまだ思えません。大事なのは、質問を作ることにテクニックがあるのではなくって、如何に質疑応答を客観的に分析して、少し違った視点から考えを導いたり、相手の情報ないしは考えを引き出したり、することなのでしょう。このことが、「質問力」の真髄ではないか、と思います。



【編集後記】サンフランシスコの出張も、いよいよペースが上がってきました。今週、予定していた仕事が終わらないことが判明し、急遽帰りのフライトを延ばしました。ホテルの予約を済ませましたが、今泊まっているホテルは、いろいろと不都合があったので、荷物をまとめて金曜日にプチお引越しです。




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