書評 〜 羊のリーダーで終わるか、ライオンリーダーになるか

すごいタイトルである。『羊のリーダーで終わるか、ライオンリーダーになるか』(皆木和義、市川周共著)を連休前半に読んだ。ちなみに小泉さんについての本ではありません。

光景を思い描くだけでおかしい。一匹のライオンが率いる100匹の羊。一匹の羊が率いる100匹のライオン。後者は考えにくいので、一匹の羊が率いるのはやっぱり100匹の羊だろうか?やっぱりライオンだよなあ。羊はメェメェと言うだけだし・・・。

ところで、この本は1匹のライオンが100匹の羊を率いる術ではなくって、1匹のライオンが100匹のライオンを率いるような、もっと強い話なのだ。いかに100匹の強いライオンを育てるか、という強力なリーダーシップについて書いてある。

幾つか良い刺激を受けた。

  1. リーダーは知を感じさせ、組織に知の渦が生まれるような場を作れ。
  2. 敵を真似ることも、自己分析がしっかりできていて学ぶ意図があれば「あり」だ。つまらないプライドは捨てよう。
  3. 危機感のある組織は、危機を早期に認めて対策を練る。無関心が企業の寿命を早める。危機感を煽ることも重要だ。

1の「知」については、自分が心がけていることの1つでもある。そもそも、ビジネスって昨日と同じことをしていたら勝てないし、良いサービスを世の中に送り出すことはできない。そう考えれば考えるほど、新しいことを生み出すしかない。新しいことを生み出すには、頭を使う必要がある。ときにアカデミックに、ときに直感的に・・・。茶飲み話ではビジネスはうまくいかない。いかに工夫を施し、それに至る努力を行い、トップ自らがそれを実践するか、が大切だ。

この「知」について、僕は強い方針を持っている。自分の組織には、R&Dを行う機能があるのだが、ビジネスもR&Dの場合も、意思決定や投資決定に至るまでの間は、ある程度の「のりしろ」が必要である。例えば、アイデアが出てこない場合や、アイデアが選択されるに至らない場合に対して、寛容でなければならないのだ。

そうすることで、チームに、自由な発想を促すことができる、と信じている。知的な作業ほど、ときに先進すぎて理解が進まないものだ。どんなに良いアイデアでも採算が取れない場合もあるだろう。でも、そうした考えを遠慮せずに言える、環境を作ることが、「知」を基調とする組織の文化を作り、実力を貯めていのだと思う。

野球のバッターに似ている。いつも大振りしていたら駄目だ。だからと言って、コツコツ当ててもヒットに至らない場合もある。しかし、結果が出なくても、不断の研究、集中力、強い精神力で次のチャンスに備える。つまり、打席に立つ。そういう組織は強いと思う。

3の「危機感」。僕は危機感を煽るのはあまり得意ではない。もちろん、人は後ろ向きよりも前向きの議論が好きなので、いたずらに危機感を煽るのは良くない。一方で、あまり自信ばっかりが前面に出てしまい、「まぁ、大丈夫だろう」のような「だろう」判断が支配してしまうと、いつの間にか危機、それはお客さんの不満だったり、自分たちの製品の品質だったり、新商品の提案の遅れだったり、提案力の減衰だったり、に気付くのが遅くなってしまう。

この本は題名が少し行き過ぎてる。本の中では、「後進を育てる」という話題に関しては決してワンマン・ライオンになれ、とは言っていない。心の強さや、芯について、学びたいあるいは刺激を受けたいときに読むと良いだろう。




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