専門家集団を束ねよう 〜 外資系企業に見るキャリア・アップの極意

ある部下へのコーチングの一コマ。その人はある分野での専門性が高く、向上心が強い。仕事もできる。少なくとも、向こう1〜2年は、今担当している仕事で、大活躍すると信じている。

一方で、このままでは、向こう3〜5年となると分からない。なぜなら、周囲はその人により高い仕事を求め、本人がその道を望めば、今よりも高い見識と広い知見が必要になるからだ。そのときに、準備ができているかどうかが、1〜2年の先に伸びるかどうかのポイントなのだと思う。

その準備は、早いうちからやって損はない。その人へは、いかに「専門分野外」の経験を拡げていくか、という話をした。


自分が属する会社のカルチャーだが、いわゆるジョブ・ローテーションは滅多に行われない。僕のチームは僕が人事権を持っているので、チーム内のローテーションは可能だが、僕は極力やらないようにしているし、慣れないプロジェクトへ参加させることもしない。

なぜならば、自分のエリアではないところでは決してプロにはなれない、からだ。

その代わり、今の持ち場では相当高いレベルが求められる。実行力や思考力、企画力、発想力を総合的に発揮してもらう。他の人より、圧倒的に抜きん出ていることが好ましい。これによって、その人が、そのエリアにおいて第一人者と目され、その人がリーダーシップを発揮することができるし、リーダーとしての経験が積める。たとえ、肩書きは平社員でも、本人の実力で先に仕事をしてしまうのだ。

この働き方は、外資系企業の特徴ではないかと思う。


では、こうしたカルチャーの中で、どうやって専門外を拡げていくか?それには2つのポイントがある。

  1. 専門家に任せる勇気(フラットな組織では、専門家とのパートナーシップが組める)
  2. 部下を持つ立場であれば、自分よりその分野で優れた専門家を躊躇せず雇うこと、そして、その人にどんどん任せること

専門家というのは社内の専門家という意味で、一芸に秀でた人と思って欲しい。今日の記事で出てきた人は、あと1年もしたらそうした専門家になっているだろう。では、その人が、欲張って他の領域で頑張ってしまうか、それとも誰かと仕事の機能を分担し、同じゴールに向かっていける環境を作れるか、が1番目のポイントだ。後者の方が、チームとしての総合力は優れているはずで、そして当の本人についても専門性を損なうことなく仕事を進めることができるはずだ。
そして、いつしか部下を持つ立場になったときに、同じように行動できるかどうかが、2番目のポイントである。任せるのと丸投げは全く違う。何が起きているか、何を考えてどう行動しているか、しっかりと把握し、必要に応じて入っていかなければならない。

往々にして、プレーヤーで成功している人は視野が狭くなりがちである。活躍し、忙しくもなるので、周囲を見る余裕や時間がなくなってしまう。そこで、他の専門家とパートナーシップを持つのだが、まずは、仕事を通じて何を成し遂げるのか、お互いが話す時間を作って、考えを交換するのが良いと思う。そうした時間を作り、相手のやっていることに興味を持ち、しっかり質問し、を繰り返していくと、自分の専門外でも分かったような気がしてくる。さらに、もっと大きい成果は、その専門家に任せるときの言葉や感覚が研かれていくことだ。

このことは簡単なようで難しい。自分のできることと得意ではないことをはっきりして、自らそれを認めなければ始まらない。謙虚になって始めて、相手に任せながら学ぶ位置に立てるのだと思う。


【編集後記】こういう次世代のリーダーが、上司である僕の仕事をどんどん取っていってくれると嬉しいですね。指示を待たず。しかし、いわゆる「報・連・相」は絶妙なのが理想です。




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