自分で判断すること〜ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく」(梅田望夫著)を読んだ。「ウェブ進化論」の続編です。(記事はコチラ

この本は、前作とは異なり、仕事術やキャリア術につながる話が中心である。その手の本では、久しぶりに読み応えのある本だった。サブタイトルの「いかに働き、いかに学ぶか」が本の内容を示している。

梅田さんはシリコンバレーコンサルティング会社を興した人なので、新しいことに取り組み、リスクをとって仕事をするという立場からの意見が多いようだ。僕にとって、自然と共感できる話が多かった。何故なら、僕もキャリアの中でリスクをとってきたからだ。僕は、8年ほど日本の銀行に勤めてから、当時は小さい外資系資産運用会社に転職、という冒険を経験した。もっとも、シリコンバレーで会社を興すのとは、比較にならないほど小さい話だけれども…。

しかし、転職をしたことのない人も安心して欲しい。梅田さんは次のような点を指摘する。それは、大きな組織で働くことのメリットだ。「『大組織のプロ』を目指す覚悟と資質があれば、(中略)大組織でしか学べないことをしっかりと時間をかけて身につけておくことができる」。

漫然と過ごしたら駄目だ。大きな組織でも小さな組織でも、「コモディティ化」したらいけない。「『自分にしか生み出せない価値』を定義して常に情報を発信していくこと」が重要であると説く。

道を選ぶのは常に自分。大きな組織に居続けても、小さな組織に移っても、選ぶのは自分しかいないのである。大事なのは、それぞれの組織で、「どう働くか」である。

「どう働くか」は「自分ではなければならない何か」を持つことだ。そのために、スキルを積み重ね、考える力を養い、組織が指向するベクトルに沿いながら、自分の力を提供していくのだ。

しかし、厳しい現実もある。梅田さんは、ウェブ時代になってスキルを高める方法が容易に手に入るようになったため、ある一定の専門家までは高速道路を通っていけるが、その先、本当にプロになるまで究めるか、それともそこから下に降りて、様々な分野を混ぜ合わせて自分の価値に結び付けていくか、は本人の判断だという考えも紹介する。

これを僕の場合にあてはめてみよう。僕は、キャリアの途中まで、資産運用というビジネスではプロ中のプロと言われる、いわゆるヘッジファンドのファンド・マネージャーになりたいというイメージを持っていた。「カリスマ」までは付かなくても、一人のブランドを持って、投資の意思決定を全て行うようなイメージだった。

しかし、徐々に自分のスキルとマーケットへの携わり方、そして他の比較優位なスキルに目覚めたこと、から、自分がファンドを運用するという究め方を目指すのではなく、多様な人や技術を組み合わせる仕事にシフトしてきた。

いろいろな転機があった。自分の能力の限界も味わった。しかし、例えば、甲子園に出て、ドラフトの下位で指名され、プロでやってみたがそこには埋められないギャップがあるような話と同様に、自分の努力ではどうやっても到達できない場合だってあるだろう。そこで、過去のプライドにしがみつくか、それとも別なものを目指すか、何か異なるアプローチを通して物事を見るか…。

やると決めたら、とことんやる。やはり仕事は好きでやっていくことが重要だ。やらされてやる仕事よりも、または、既にレールが敷かれている仕事よりも、自分でアレンジを施し、他と違う何かを見据えて、仕事をしていく。これについては、大企業でも小さな組織でも同じだった。両方を経験した僕は、そう思う。

「人のせいにしない」ことを「ウェブ時代をゆく」はさらに伝えているようだ。では、どうしたら良いか?

それは、自分で考えて自分でその結果の責任を負う、ということだ。逆に言うと、責任を負う覚悟がないと判断はできない。大きな組織に残ることも、既存のやり方に従うことも、実は無作為という名の判断だ。

世の中のスピードはますます高速化していく。そこで、どんな組織で、コモディティ化しない自分の働き方を見つけていくか。こういう気持ちが持てて、環境の変化が訪れる少し前か同時にでも、自分の舵取りができるようになれば、仕事は楽しく操作していけるのだと思う。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)




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