上司からの権限委譲と自分で役割を伸ばすことの両立


昼休みに時間をかけて、権限委譲(デリゲーション)と新しい役割を伸ばすことについて考えていた。どちらも、部下に対する教育の話題である。

権限委譲は、言うまでもなく、「部下にマネージャーの仕事を取ってもらう」ということ。上司である僕が口出しをしすぎると効果は出ないし、物理的にその場にいない方が良いことが多い。

「新しい役割を伸ばす」というのは、分かりにくい表現かもしれない。「新しい役割を伸ばす」とは、部下本人が、自ら率先して仕事を取りにいくことをここでは指す。上司から言われる前に、自分で考えて行動しないと意味がない。

権限委譲と新しい役割を伸ばすというのは、形式的には「仕事を任せる」という意味で同じなのだが、どちらか一方に偏ると良くない。権限委譲ばかりすると、部下の考える機会を失ってしまうし、上司である僕はなんらかの形で部署に留まらないといけなくなる可能性さえある。

部下が自発的に、新しい役割を伸ばしてもらうのであれば、それ以上望むことはないが、このことは簡単ではない。上司がよっぽど駄目な部署なら、そういう効果も望めようが、それは偶発的な育成法である。普通は、上司が少しずつ経験やヒントを与えながら、部下本人の気付きを育むことが必要なのだろう。

実際の話は、さらにややこしい。上司である僕が担っている役割は、さまざまなものが絡まっているのでかなり複雑である。権限委譲をしようと思っている対象者は複数いて、その複雑さゆえに、現状では1人を選抜してすべてを権限委譲する状況にはない。

つまり、部下たちの連携が欠かせない訳で、それぞれの部下に、どのような機会を与えるべきか、を考えていたのだ。

「考えていた」と言ったのは、自分がまだそれを実践できていないということの裏返しだ。環境やビジネスが複雑になっている以上、そして自分がマネージャーになったときよりスピードが上がっている以上、自分と同じ経路をお膳立てすることは好ましくないだろう。

今書いてきたことが「上司である僕」と「部下」の関係についてなのだが、同じようなことが「部下としての僕」と「僕の上司」との間にもあてはまる。

つまり、自分が担わないといけないだろう新しい役割は、自分の上司と同じ道を辿ったら、それはベストではない可能性が高いのだ。

権限委譲と新しい役割や仕事を取っていくというのは、物理的にも、精神的にも、能力的にも、表裏一体ということなのだろう。




こちらへも遊びに来て下さい。→金融の10番は日本人に任せろ!