書評〜ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか?


ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか?―セルサイドからバイサイドへの勢力の逆転を現場の声で伝える

ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか?―セルサイドからバイサイドへの勢力の逆転を現場の声で伝える

90年代後半から現在に至る業界の背景を簡潔にまとめていて、これから金融業界を目指す人、また現在金融業界にいるがサポート業務を担っている人には格好の業界入門書になるのではないか。

「バイサイドへの勢力逆転」だからと言って、セルサイドはなくならないし、セルサイドの意味はあり続けると思うし、そもそも「逆転」という表現も主観が強いような気がするが、金融は人材が重要で、セルとバイでその人材を取り合っている面は強いから、バイサイドに人が流れている事実からすると、なるほどそういう言い方もできるか、と思う。

そういう自分は今までバイサイドで働いてきて、この本で書いてあるような背景や出来事は目の前で繰り広げられていたし、実感そのものである。

金融業と聞いて、よく思い出されるのは、昔よく言われていた言葉だが、「経済の潤滑油」というフレーズだ。このことは今も変わらないはずだけれど、いつしか金融技術が発達し、潤滑油どころかジェット燃料くらいの性能になってしまった。これを制御するのは大変なわけで、しかし危険物を扱っている訳だから言い訳はできないのだけれども、結局制御できなかった。そして、「潤滑」という奥ゆかしさではなく、「お金がお金を稼ぐ」という資本の論理、とりわけお金が余っている中での加熱した期待の中で、潤滑から一人歩きしてしまったと形容することもできよう。

などと堅い言い方をするまでもなく、セルサイドを含む金融業は、経済の潤滑油たる役割がなくならない限り、存続するだろうし、相応の対価は得られるはず。

ウォール街(含む他の金融街)というところは、一番にならないと気がすまない人たちがたくさんいて、このことが問題を大きくするのではないか?金融技術は人によってもたらされるゆえ、そして金融特許がなかなか発達しないゆえ、技術や商品が簡単に真似され、そして競争のもとで過熱感が高まる。




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