働き方革命

共感した本でした。駒崎弘樹さんの『働き方革命』。

働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)

働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)

新宿のBook1stで、社会起業家という本のコーナーがあり、何冊か手にとって買ったのだが、この本は最初に駒崎さんの経歴に目が留まった。

駒崎さんは僕より1回り下の若い人。大学在学中にIT事業を起こしたが、社員の病気や退職をきっかけに、我武者羅に働くやり方への疑問を抱き、事業を譲渡し、現在は働き方を支援するNPOの代表を務めているという。

「働く」ことや「自己実現」には、いろいろな考え方があると思うが、駒崎さんは

  • 子育てをする人(男性でも女性でも・・・)が定時に会社を出れて、
  • 男性でも家事を担うことで家庭への『働き』を楽しみ
  • 社会へも貢献(いろいろな型があってよい)することでその『働き』を楽しむ

社会を志向している。

単にもっと女性の労働力を活用しようとか、男性も育児や家事に参加をとか、地域社会への貢献もしようと言っているのではない。駒崎さんは「働きマンな自分が好き」と言えた過去を持ち、しかし次第にそのことがいろいろな問題を放置、あるいは起こしていることに気付く。例えば、夫婦の1人(典型的には男性)が深夜まで働くとなると、我武者羅に働くこと(長時間労働)による生産性の低下、後継者が育ちにくいという会社内の問題、家庭で会話が失われるなどの問題、病気や育児によって可能性のある人が働けなくなる問題、などがある。

僕も長時間働くことで自分を立ててきた人間だ。同時に効率性や創造性も追い求め、より大きな仕事をしようと心がけてきた。仕事大好き人間、そしてやりたい仕事ができて毎日が楽しかった。しかし、ゆっくりと成功体験が自分を蝕んでいく。高い山を見ると登りたくなる。しかしその山は自分が登るべき山か、登った体験をどう活かすのか、登った後にどこへ行くのか、を考えることはなかった。何故登るのか?それはその山がより高いところにあるからだ、としか考えていなかった。

自分の感情や家庭も犠牲にしてきた。しかし、最近は違う良さが見えてきた。以前の記事で、「昔だったら、プライベートだから何かをしよう、例えばテレビを見たり、外食をしたり、という形で何か行動を伴っていることがプライベートへの切り替えだったと思う。今は、何もしなくても幸せを感じる、ということがプライベートだと思う」という変化を語ったことがある。文脈をここで補足すると、そこでは”何もしない”ことが良いと言うのではなく、言葉を通じて心が通じた家族といることによって何もしなくても満たされる、ということを書いている。そして、このことは、当然に作用・反作用の力学でしか継続しない。つまり、僕が”満たされる”のと同時に相手のことを”満たす”のだ。

僕は今は病気のおかげで自分の生き方を振り返ることができて幸せだ。そして、これからはただ山を登るのではなく、その意味を社会の視点で考え、そして家族と共有して、自分のためだけでなく登ってみたいと思う。

働き方の問題は、僕らの気持ちだけでは成就せず、一義的には経営者と価値観が合っているかという問題であるだろう。従業員は会社という器を選ぶ「転職」をすることもできるけれど、今のような不況では簡単ではない。もし、今働いている会社が長時間労働に依存するようなやり方をしていたら、個人としてそれを打開するのは容易ではない。

しかし、もし長時間労働に疑問を持ち、そして競争社会の中で昇進だけを糧に頑張る方法に違和感を感じたら、どういう働き方が良いのか、自分を活かす場所はあるか、について考えておくことは意味があると思う。チャンスはいつか訪れる。そのときにチャンスと気付くかどうか、そのチャンスに賭けると思えるかどうか、は普段の準備にあると思う。




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