たまには振り返るのも良いかな?

11年勤めた会社を去るにあたって、その11年間を振り返ってみるのも悪くないと思い、試みてみます。

こういう話を会社ですると、むかしばなしに過ぎないので自分より後に入ってきた人には受けが悪い。そして、たかだか11年でも古参の部類に入る外資系では、ほとんどの人が自分より後に入っているので、こういう話を安心してできる相手がいない。それに加えて、昔の話は過去の出来事なので、未来志向の強い僕は話をすること自体に興味がない。それを敢えてやってみようということです。

外資金融の戸を始めてたたいた11年前の頃。会社も小さく、組織の能力よりも個人の能力の寄せ集めで仕事をやっていたような時代。システムも脆弱で、自分でプログラムを書いては仕事の効率化を進め、それでもネットワークが半日ダウンしてパソコンすら開けない日が幾度とあった。

しかし扱っている商品には自信があった。その商品の品質を支える苦労といったら、泥臭い大変なものであったけれど、良いものを育てていこう、普及させようとする気概が僕らにはあった。社長のビジョンもはっきりしていた。海外本社のビジョンを訳した部分がちょっと堅苦しかったけれど。

自分は社会人9年目くらい、丁度30歳を過ぎたあたりから、この会社の成長と共に自分も成長させてもらったと思います。一般に若手から中堅に差し掛かる年代で、自分の頭と手足をフルに稼動させながら、モノを創っていく毎日だった。「業界初!」の旗を取るべく没頭したし、まだ見ぬ領域に自分たちを持っていこうとする気力があった。おかげさまで、業界をリードするような商品も産まれ、営業部がさらにマーケティングを効果的に行って業界をリードしていった。

海外本社やチームのメンバーが、非常にオープンな性格だったのもこの成長ストーリーを後押しした。良い物は良いと言う。疑問に思ったらトコトン考え対応を決める。このチームには、違う事や意見に対する寛容さと、良い物に対する価値観がはっきりしていたのだと思う。荒削りな部分はたくさんあるが、モノを創っていく執着があった。

ビジネスが成長するに従って、優秀な人材も集まりやすくなり、僕もいつしかチームを任せられるまで成長させてもらった。そこで、会社が率先したのが人材ポートフォリオ革命。似たような人材を採用するのではなく、異なる専門家を集めてより高度なものを創っていく体制だ。一人一人の専門家がリーダーシップを発揮しなければこの構想はうまくいかない。それに、お互いの信頼によってのみ成立する、真のチームワークを築かなければならない。

このことは、自分よりもある分野において優秀な人材を採用し、育てていくこととを意味する。この頃から、自分はマネジメントのスペシャリストを志向し、個々の分野のスペシャリストを束ねていくことを決める。それ自体が自分にとっての新しい挑戦であり、チームがチームワークを育てていくという挑戦を負い、今に至るまで上手く機能したと思う。

ビジネスという点では、金融危機の影響は大きいものだった。僕のビジネスでは、リーマンショックよりも早い時期に、既に変調が起きていた。リーマンショックはいわばダメ押し的なイベントであり、それまでに取り組んでいた改善のスピード感が不十分であったことを思い知らされた。

それらから学んだものは大きかった。改善の取り組みは、新しいことに挑戦する自分たちのチームにとって、辛いものではなかった。しかし、それを顧客に説明するプロセスや体制は、常に新しいものが必要だったし、信頼をつなぎとめるためのメッセージや態度を示すことは、神経をすり減らすものだった。僕は、他人への共感が強いためか、体調を突然崩し、止む無く長期療養に入る。次世代リーダーが育っていたのがせめてもの救いだっただろう。

半年の療養の末に戻った仕事では、最前線のリーダーから裏方のリーダーに立場を変えた。いわゆる企画調整型の役割だ。自分でも驚くくらいのスピードで案件を片付け、「さて次は」と思ったところへ転機が訪れたという訳だ。

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仕事なので、自分が決められる道もあれば、周囲や世の中の要請でその道を歩いていたということもある。いずれにしても、自分がそこから何を学び、周囲に何をもたらし、それで次につなぐことができるか、が僕のいままでの仕事観だ。会社は1つの場にすぎないが、そこで働くということは、その会社の資本や資産、そしてブランドなどの無形資産を利用させてもらって、自分という会社を経営していくことに他ならない。今までは、その自分が成長(苦労)するスピードと、会社の成長(苦労)するスピードが合っていたということだろう。それは、僕だけではなく、多くの人が実感してきただろうし、そう実感している人が多いと思うからこそ、自分はその中で先頭を走る役割を好んできたのだろう。




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