おカネが変われば世界が変わる(前編)

資産運用の1つの形は利益を追求することで、市場原理によって無駄が排除され、より良いサービスが産まれてくる。勤めている会社の株主は直接会ったことがなくても、その意見は巡り巡ってくるものであり意外に強力だ。

まずは逆のお話。僕が勤めていた日本の銀行(株式会社ですよ)での話。90年代前半という古い話だが、配当金は業界内で横並び、手数料も横並び、給料は年功序列で基本型は横並び。会社にコスト意識は強かったけれど、サービスを良くしようというよりも、他社に負けないようにしようという意識がとても強かった。

一方でプロスポーツの世界。スポンサーが大きな力を持っている。選手は頑張る、サービス(パフォーマンス)を向上させる、給料が上がる。僕が外資系を覗いてみたいと思ったのは、こんなところにも理由があった。

市場は度々行き過ぎる、という弊害があってそれについてはいろいろな議論もある。市場に対する議論は別の機会に譲るとしても、だから市場をなくそうという意見は極論だろうと思う。

そんな中で、長期の投資に向いた1つの形が社会的責任投資(Socially Responsible Investment)ではないかと思った。社会的責任投資とは、社会的責任を果たしていると思われる企業に投資することを言うが、社会の定義は様々だし、投資のリターンと社会的責任は、時にはプラスの関係を持つけれど、トレードオフの関係にある場合もある。

例えば社会的責任を果たしている会社の商品を買おうという事例。最近ではエコ関連グッズがこれに当たる。皆が「おっ、それいいね」って言って消費の形で社会に貢献すれば、投資のリターンと社会的責任の関係も自ずとプラスになるだろう。

しかし、社会的責任は時にはコストがかかり、また認知を受けるのに時間がかかるから、その間はマイナスの関係になるだろう。

個人が社会的責任投資をしたい場合は、なんらかのファンドを購入する形が現時点では手っ取り早い。しかしその場合でも、ファンドには実に様々な考え方のものがある。社会的責任を重視するファンド、とは言うもののリターンもしっかり追求したいファンドなど、そんな中から、自分にとってこれがベストのファンドを見つけるのは容易ではない。

SRIファンドについては、僕が気付いた範囲では2004年の証券アナリスト・ジャーナルに特集がされ、今ではいろいろな著作物や、社会的責任投資フォーラムまで出来ている。

こうした投資が広く世の中に浸透して欲しいと願うけれども、残念ながら巨額の資金を運用する年金基金の動きは鈍いようである。(例えば社会的責任投資フォーーラムの2009年の年報

年金基金は長期資金だから、直観的にSRIに積極的かと思いきや、理念的に共感しやすいSRIであっても、それがリターンの観点でベストという判断がしにくいから、その資金の多くはSRIに向かわない。例え意思決定者がSRIが素晴らしいと思っても、全ての年金受給者がそれが良いと思うかどうかは別の話で、年金受給者はより高いリターンを得て老後に備えたいから、意思決定者もそのように行動せざるを得ない。

そうなると理念に共感できる個人が、自らリスクを取りながら、リターンを追求することと社会的責任を負う企業を応援することに折り合いを付けながら投資を行うというのが、今の大きくなりつつある流れである。今後も社会が成熟化を深めていくに従って、こうした活動を通じて金銭的な豊かさへの追求から心の豊かさへの追求へ拡げようという人が多くなっていくのではないだろうか。

さて長くなったが、ここまでは投資、ファンド、投資信託、という資産運用の話の中で議論をすすめてきた。一方で、忘れてはいませんか?金融には銀行という形態があることを。

銀行は預金を集めてお金を貸す仕事をする訳だが、そのお金をどこに貸すのかはとても気になるところだ。

しかし資産運用の仕事で、数年前に銀行株を担当したときにあった話は、銀行にとって利ざや(粗利)が大きい貸出し先は、個人の住宅ローンか、中小企業の貸し出しだと言う。中小企業と言っても、パチンコ店などの遊戯系の会社だった。風俗と言われる相続不可能な会社も貸出し先には名を連ねます。いずれも合法だし、社会的にもそれがいけないと言う意味ではないけれど、預金者にとっては目を覆いたい人もいるでしょうね。

利ざやの大きな会社は時代と共に変遷する。バブル期は言うまでもなく不動産や不動産にお金を貸すか会社。貸したお金が返ってこなくなって、不良債権がたくさん積みあがっていきましたよね。預金者の中には預金保険が効いて元本が確保されるとは言えども、自分の預けたお金が、どこへ向かっていくかというのは大きな関心事になる訳です。

今最もホットな話題は、国債でしょう。銀行は貸出し先がなくて困っているので、仕方なく国債を購入する。国はそれで立派な道路とかトンネルとかを造ってしまう訳です。でも、それって全然預金者の意図とは関係なく進んでいく。

そんな問題意識から、この本は始まります。

いけません。本題に入る前に、持論を展開し過ぎて今日は終わってしまいました。続きを明日書きます。

おカネが変われば世界が変わる―市民が創るNPOバンク

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