おカネが変われば世界が変わる(後編)

昨日の続編です。

昨日はファンドなどに見られる社会的責任投資(SRI)に触れ、そういえば銀行という業態はどうなのだろうというお話をしました。

調べ始めたところなので、詳しくはありませんが、銀行にも社会的責任に共感し行動しているところがあるようです。この本で挙げられていた西武信用金庫滋賀銀行のHPを覗いてみると、まずは東京都でエコ金融プロジェクトというのが2009年の10月から行われていることを知りました。

これはエコ関連企業を対象とする融資プロジェクトのようなものではありませんが、預金残高の一部や金利の一部を銀行(東京都民銀行西武信用金庫)をNPO団体に寄付するというものです。

これとは別にNPOバンクと呼ばれるNPO団体が貸出しを行っています。それが、この本のテーマです。やっと本題に来れました。

NPOバンクといっても、それは1つのNPOではなく、全国にいろいろな理念と名称のNPOバンクがあって、規模も出資総額で1000万円くらいのところから2億円くらいまでいろいろある。貸出し先の事業も、環境だけでなく、福祉や介護から地域活性化までと多岐にわたる。詳しくは全国NPOバンク連絡会のHPを見ると良いだろう。

せっかくの良い仕組みなのに、制度上の問題を抱える。NPOバンクは法令上の銀行ではなく、それゆえ預金者から預金を預かって利子をつけるというビジネスができない。その多くは出資者から無配当・無利子で出資を募るという組合形式を取っている。残念ながら預金保険の対象にはならず、元本の保証はない。

出資金は低利(年利1〜5%)で複利計算しないなど、出資を受ける側に大変有利な仕組みだ。ここで、低利だから出資者に無利子を強いている訳ではないことに注意しよう。NPOバンクが利子を提供してしまうと、その預金は金融商品取引法の定義で金融商品とされ、それを取り扱う団体には相応の規制や監査などのコストがかかる。同時に日本では銀行免許を取るのは大変とされているから、このような形にせざるを得ないのである。真に制度の問題であると言わざるを得ない。

融資については、銀行ではない以上、貸金業法によって規制を受けるが、これについては今年4月26日の改正貸金業法で総量規制や信用情報を提供しないといけないとする提供義務の適用除外とされ、運営上大きな支障となることを何とか免れた。(資料2の(5)を参照。)

それでも、出資者は無利子のままだし、今後インフレになるような時期でも来れば、その問題はますます大きくなっていく。

こういう状況ではあるけれど、社会的な金融インフラという意味で、僕はこのNPOバンクの可能性を感じるのです。先日の記事「過度な利潤とは?」では、株主資本という形をとると、株主の期待と事業主の想いがズレることがあるから、適正だと思われる利益(すなわち配当)と社会的責任のバランスを取るのが容易ではない(しかし不可能ではない)という話をした。

これが銀行のような形式だと、一定の利息を返してもらえばよいから、事業主が利益に走り過ぎることは防げるし、株主による配当要求に屈することもあるまい。屈するとはちょっと皮肉な表現だが、少なくともコミュニケーションの行き違いで、配当が少なすぎるという誤解が生じることはあるまい。

今後も注目、そしてできる範囲から応援していきたいと思います。

おカネが変われば世界が変わる―市民が創るNPOバンク

おカネが変われば世界が変わる―市民が創るNPOバンク

なお、この本の出版社であるコモンズ社。他の本は読んだことがないけれど、なかなか面白いセレクションをしていると思います。コモンズ投信とは関係がないようです。




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