中国、大国の虚実

中国についての調査をはじめたばかりなので、この本の位置づけをここで述べるのは難しい。そして、日経の記事を再編集した本書は、ポイントが多岐にわたるので、内容をまとめるのも難しい。

基になった記事は2005年から2006年の前半のものである。つまり、今から4年以上も前の話。現時点での状況は変わっている可能性が非常に高い。なので、本書は、現代の中国の網羅的に知るために、また高度経済成長期に存在する本質的な問題を歴史的に理解するために、位置づけるのだろう。

そうして見ると、現在懸念されている不動産バブルは、地方政府を中央が仕切れていない政治システムの問題や、過剰投資がもたらした過剰マネーが投資先を失って不動産に向かっていること、生産活動の外資依存度が高く国としての成長産業が見出せないこと(投資先の欠如)、消費よりも短期の投資を好む国民性、などがある。

近い将来の問題は少子化だろう。一人っ子政策の結果として、2020年代には労働人口が減少に転じるという。日本よりもはるかに早い速度で、高度成長期を駆け抜け、そして高齢化を歩んでいく。現時点で既に、中国の人件費が上がり始めたとか、内陸部も経済成長に駆り出されたという報告があるが、その延長線上で考えると中国が世界の工場であり続けるのは、そう長くはないのではないか。新興国として位置づけられる期間は、今我々が思い込んでいる以上に短いのかもしれない。さらに「製造業では技術の積み上げが進んでいない」とこの本では指摘していて、もしそうだとすれば、生産マーケットとしての中国は早くも壁に当たるというシナリオも考えられる。

日本がそうであるように、しかし少し違った意味で、消費マーケットとしての中国は魅力的であり続けるかもしれない。しかし、そのマーケットが人口だけでなく、厚みの伴ったマーケットであるためには、向こう10年〜20年の間に、中国経済がどの程度キャッチアップできるかが重要なポイントになるのだろう。

2006年の本書の調べでは、社会保障や医療、行政、公害などの社会的なインフラが決定的に整っていない、とある。現在でも報告されるデモや暴動はこうした問題や貧困、政府の腐敗などの問題を映しているようだ。日本よりもはるかに大きな国が、はるかに多くの不安定要因を抱えて、次の経済ステージに移ろうとしている。




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