ドル漂流

ドル漂流

ドル漂流

ミスター円」と言われる榊原さんの本。帯にも書いてあった。榊原さんの本は始めて読んだなあ。ところで、最近「ミスター○○」の称号が付くのは必ずしも名誉なことではないような気がするが、どうしてこう人を持ち上げるのかな?ミスターはジャイアンツに限定して良いのでは、と思う。

先進国のデフレ、米国資本主義の終焉、中国インドの台頭、EUの苦悩など現在報道されているような問題を整理した上で、米ドルが基軸通貨だった世界が、いずれ長い年月を経て無極化に向かうだろうと考えておられる。多極化ではなくって、無極化という言葉が印象的だった。もっとも、多極化と無極化の違いはそれほど重要ではなく、多極化と言うと、ポンドからドルに覇権が変わるときに地域ブロックによる通貨圏が出来ていたのが多極化で、グローバル経済の現在においてはそうした動きは起こらないだろうとする、微妙なニュアンスの違いだったりする。

榊原さんは経済学者ではないので、いろいろな諸説から自分の考えや感覚に合ったものを選択し、それに自らの体験を交えて紹介していくいうアプローチ。大変読みやすい本です。

基本的には、先日読んだ水野さんと近い大局観に立っているように見受けらます。(実際、本の中で何度か参照されています。)今起きていることは、構造変化を象徴するもので、米国経済もドルも今後数十年かけてその役割を下げていく、と。その背景にあるのは、中国のGDP2045年にもアメリカを抜くというゴールドマン・サックスの推計です。その推計の精度について議論するまでもなく、人口の差と成長率の差から言って、いずれ中国はアメリカを追い抜く可能性が高いことには異論がありません。

ではドルはどうなるのか?著者は、本のタイトルが言うような「ドルの漂流」までは予測していません。ポイントは、構造的に、ドルや米国経済が経済の牽引という役目を終え、経済や仕組みの成熟化に向かって変化していく、ことのようです。しかし、先進国が抱える成熟化の課題は、社会保障などの政策も絡んで来るがゆえ、民間よりも政府がより関与する問題のように思えますね。




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