超大国の破綻

超大国の破綻―アメリカ一極構造の危機と世界デフレ

超大国の破綻―アメリカ一極構造の危機と世界デフレ

ティーブン・ローチは和書や翻訳本は見かけないが、著名なエコノミストである。

この本が出たのが、2003年の9月。この当時から、アメリカのサブプライム問題を言い当て、欧州の構造的な問題や日米の財政問題、グローバル・インバランスについても指摘をしている。

誰もが熱狂しているときに、持続不可能な不均衡や熱狂そのものに問題があると見てきたのだろう。

この本の主張は今でも色褪せない、という部分に読む価値があった。今となっては明白なのだが、依然として世界が抱えているのはアメリカの消費に経済全体が頼りすぎているという点だ。著者は、各国がアメリカへの輸出依存の体質を改め、内需をもっと大きくすべきだと言う。アメリカは、いずれ借金のつけを支払わざるをえなくなり、そのときは通貨安という痛みを伴うが、それは同時に各国が抱えるドル資産の減価であり、さらにいままで消費をしてくれたお得意様が貯蓄を増やすあまりに、世界的にも痛みを伴うということだ。それをショックの形で負わされるのか、徐々に準備するのかは大きな違いがある。

デフレについても説明がある。著者は、1)景気循環による価格低下、2)バブル崩壊による過剰設備(供給)、3)グローバル化、の3つが原因であると考えている。デフレは日本だけでなく、他国にも当然に起こる可能性があり、金融政策では治せないという。それゆえにグローバルのインバランスを修正(リバランシング)すべきだと主張する。

この本を読むと、2003年から7年もの間、世界は何も変わっていないような錯覚を覚える。実際のところは、アメリカの不動産価格は落ち、不動産に頼りきっていた金融機関と消費者は借金のつけをサブプライムローンの一連の破綻で負うことになり、その影響を世界も受けている。つまり、なすすべもなく、持続できないものが崩壊し、そして物事の深刻さに気付いているようである。

では今後、アメリカに依存しない消費社会、内需ないしは人口が増えるインドなどの経済圏を含めた成長戦略(中国は短中期的には市場になるが高齢化を早く迎えるので消費の質が課題となろう)、あるいは消費社会そのもの、は実現可能だろうか。この本ではそこまでは書いていないが、こうした問題が目下の課題ではないだろうか。




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