エネルギーの未来


2009年9月に発売された「エネルギーの未来」を読みました。

<ビジネスの未来1>エネルギーの未来

<ビジネスの未来1>エネルギーの未来

なかなかこういう本はないんじゃないの〜と思い、楽しく勉強しました。著者が属する、そして訳を担当するブーズ・アンド・カンパニーはコンサル会社で、僕は知らなかったけれど、海外では有名なようです。コンサル会社が、顧客からの特定のニーズを一般化して、こうした著作物にのこした内容は、大変勉強になります。

石油、石炭などの従来型化石燃料から、カーボンフリーと呼ばれる風力、バイオマスまで、エネルギー業界を占う上での必要な知識や動向について、詳しく見ていくことができる。

エネルギー業界が直面しているのは、主に新興国による急激な需要増と、OPEC以外の石油産油国による資源枯渇と、温暖化ガス削減の動向である。そこにエネルギーに対する技術革新が加わり、情報は氾濫し、かつ事情は複雑化している。

例えば、ひと昔前なら、「石油はあとウン十年でなくなる」と話されていたが、今ではオイルサンドと呼ばれる新しい石油資源が発見され、その埋蔵量がサウジアラビアの石油の10倍以上もあるなど、化石燃料だけを見ても、事情がずいぶん変わってきた。

生活に身近なところで、ハイブリッド・カーや太陽光発電などのエコ化の動きがある。自動車などの輸送用機器では、その95%が石油によって動いているそうだ。しかし、視野を世界のエネルギー需要に向けると、輸送よりも電力発電の方が大きく、最大の供給源は石炭だそうだ。この石炭、温暖化ガスの点ではもっとも悪い。しかし、値段が安く、生産コストも低い。資源がいろいろなところで獲れる、とりわけロシアや中国、インドなどの新興需要国で獲れるから、石炭による発電はこれからも伸びるという。

それゆえの温暖化ガス問題ではあるが、この動向は先進国と新興国の間で利害が調整されず、予断を許さない。加えて、新エネルギーの開発や生産は、従来型の石油や石炭よりもコスト高だという。しかも、一見すると費用がかからなそうな風力や太陽光発電についても同じことが言えるそうだ。

というようなことが延々と書いてあるので、エネルギー事情を多角的に捉えていくにはなかなか為になる本だと思う。

なお、本書では、投資や投機資金などによる価格変化については触れていない。石炭の価格は、使用が工場に限るなどの事情や移送コストが高いことから、一般に硬直的であるのに対し、石油は資本による影響を受けやすいと理解する。原油価格が1バレル147ドルを記録したことは、まだ我々の記憶に新しい。

新エネルギーのうち、世界的に流通可能なもの(例えば液化天然ガスなど)は、投資や投機の対象になりやすいということだろう。天然ガスが高くなると、石炭を減らすモチベーションにならないなど、相対比較の要因が常に働くのが難しい。資本による価格変化が、実際の需要と供給(需給)にって導かれる資源開発を歪めないことを祈るばかりである。


【編集後記】W杯、決勝T進出おめでとう!本田選手の「最高の準備をして次に備えます!」に力をもらって、僕も頑張ります。




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