書評〜これからの思考の教科書

本書は、ロジカル・シンキング(論理的思考法)を分かりやすく説明した後、それと対照的なラテラル・シンキングを説明し、最後に2つを組み合わせたインテグレーティブ・シンキングを紹介するという構成になっています。

有名なロジカル・シンキングについては、数多くのビジネス書が出ていますね。別に「思考法」といった方法論やテクニックに従わなくても、論理的に考えることがいかにビジネス向きかというのは、改めて書くまでもないと思います。

一方、人間は人間なので、たとえば分かりやすくサービス業の仕事を考えると、論理的であるだけでは十分とは言えず、心のこもったサービスを提供することが大事です。つまり、そういう思考法がラテラル・シンキングの一部です。

ロジカルな思考は、自社だけでなく他社も当然に使ってきますから、いずれ商品やサービスが一般化されて、他社との差別化が見いだせなくなる場面が来ます。そこで、創造的な商品やサービスを産み出す力が必要となります。創造的な発想を行うことも、ラテラル・シンキングの一部です。

人の心に届くやり方を考えたり、創造的な発想を行うことは、論理だけではなく、直感といったより人間味のある能力を使うという意味で、共通しています。


「これからの思考」というのは、その2つを組み合わせた「インテグレーティブ・シンキング」のことを言っています。その方法論は、確立したものがないそうです。本書では、その困難に立ち向かい、説明を試みています。すごいことですね。

本書がせっかく説明してくれたインテグレーティブ・シンキングですが、感覚的に分かった気にはなったけれど、それ以上の意味は分かりませんでした。思考法を分解していったので、1つ1つの理解は進んだのですが、ではどうやって組み合わせるのかというのが、よく分からなかったというのが、率直な感想です。

しかし、もしかするとそれで良いのかもしれません。インテグレーティブですから、本来はバラバラに分解したらいけないのかもしれません。ロジカルとラテラルの2つをいろいろな場面で使い分けていけば、いずれ両者の良い面を取り入れた思考法が体得できるのではないでしょうか。楽観的すぎるかな?

分からなかったとは言え、本書の主張には賛成です。ロジカルとラテラルを組み合わせることは、これからのビジネスはもちろん、いろいろな場面で効果がありそうです。


僕の思考の癖を紹介してみます。僕は、一人で考えるときはロジカルを多用します。しかし、チームをまとめたり、議論をファシリテートするときは、ラテラルを多用します。なぜなら、自分がロジカルで攻めるので、違う視点を入れたいからです。必然的に、違う専門分野の人の意見や、他人への共感から生じた意見を、意識的に聞いて、取り入れていきます。

生まれつきの思考法はなかなか変えられないので、おそらく無意識に他の思考法の良いところに目が行くのだと思います。他の良いところを排除するのではなく、取り入れることができれば、その行動こそが、インテグレーティブ・シンキングによるものだと思います。

この解釈は間違っているのかもしれません。本書が紹介する思考法を身にまとうことで、個人としてインテグレーティブに考えることができる人もいるのかもしれません。

しかし、仮に読んで難しいと思っても、焦る必要はないと思いました。ロジカルとラテラルという2つの思考法があり、それを組み合わせるという概念を知ることこそに、意味があると思います。その点だけでも、本書の利用価値は高いと思います。説明は平易で、読み進めやすい本でした。

これからの思考の教科書 ?論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方?

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