アグリビジネス〜地域金融による試み

アグリビジネスとは、その名のとおり農業関連のビジネスなのだが、週刊エコノミスト(2010年11月16日号)で、地域金融機関による最近の取り組みが紹介されていて、面白かった。

従来は、JAバンクなどが手掛けてきた農家向けのローンが、最近は、民間の銀行や信用金庫によって多様化、金額も増えているというのだ。農業向けローンは、「自然条件に対するリスクが高い」「投資回収期間が長い」「主な担保物件は農地」であることから、敬遠されてきたそうだが、多様化の柱は次のとおりである。

ABL(動産・債権担保ローン) 収穫される農作物や畜産物などを担保に貸し出すローン。先駆例は鹿児島銀行。日本全国で拡がりを見せていて、2005年度に47億円だった融資額は2009年度には617億円(約13倍)に伸びた。

アグリファンド 融資ではなく投資の形で資金供給を行う。きっかけはJAグループが作ったが、民間初のファンドは2006年に愛媛銀行が創った。ファンド規模は5億円。同様のファンドは、宮崎、鹿児島でも見られるという。

マッチング 資金供給ではないが、銀行が農業ビジネスを支援する方法の1つとして、顧客同士のマッチングがある。エコノミストの記事は、長野の八十二銀行の取り組みを紹介している。もともと精密機械産業が多い長野県は、企業の海外進出を手助けするためにマッチングを行ってきたが、農業関連の企業へ対象を広げているのだそうだ。


地産地消の概念のように、農業関連ビジネスの比重が高い地方において、地元の民間金融機関が細やかなニーズを掘り出してはビジネスを支援するこうした動きは、これからの日本において、大きな可能性を感じる。

以前に地方公務員が地元の農業振興をリードした事例(TBSのテレビ番組より)を紹介したが、地方ビジネスの大きな利点は、それぞれの地方が切磋琢磨する競争が働くことだろう。銀行員も公務員同様、比較的官僚的であると思われるが、「隣の県ではうまくいっているらしい」という言葉に最も敏感かつ弱い人種でもあろう。きっかけはどんなモチベーションであっても、前進することができれば、すごいパワーになるに違いない。


日本のTPP参加は、政治問題になっていて、まだどうなるか分からないが、農業の生産効率を上げるためには、民間による農業法人への支援が不可欠だろう。そうした農業法人が、付加価値を一層高め、同時にグローバルへの販路を獲得していくことによって、日本の農業の選択肢を拡げることになるだろう。




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