外株インデックスのETF〜KOKUSAIに潜む国債のリスク!


たまにしか書かない「資産運用」ネタなので、唐突感のある言葉が並ぶかもしれませんが、最近思ったことを書いてみます。

「企業の株式を買うのはどうも・・・」「株式を複数買う(リスク分散)ポートフォリオを作るにはお金が足りない・・・」という方には、投資信託(投信)というファンドに参加する方法があります。

日本株は少し頼りないなあ・・・」とか「海外の株式も持っておきたいなあ・・・」という方には、海外の株式を組み入れた投資信託に参加する方法があります。

証券市場にはさまざまな投資家が参加していますから、値段は大きく動きます。短期で見ると、大きく下げたりすることもありますから、あくまでも長期で投資できるという姿勢や状況が必要です。

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銀行や証券会社はあまり薦めないかもしれないのですが、低価格のインデックス投信という商品があります。何が低価格なのかと言うと、ファンドを売買するときの手数料や、保有していてもかかる運営手数料(信託報酬と呼ばれています)が低いのです。低いということは、金融機関にとっては、あまり儲からない商品なので、わざわざ薦めてくれないかもしれないし、サイトの説明もあまり派手ではありません。この辺りは、山崎元さんが普段から話していることです。

インデックスとは、TOPIXのように、ある国に上場している企業のうち、一定条件をクリアした株をすべてパッケージにしたものです。TOPIXの場合の一定条件とは、一部上場ということになりますね。

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海外株式では、日本以外の先進国の株式を組み入れる「MSCI KOKUSAI」インデックスというのがあります。なぜ、日本が入っていないかと言うと、日本の投資家は既に日本株をたくさん持っているから、日本以外の株式をパッケージしているのですね。年金運用の世界では、日本株と外国株を分けて運用管理することが多いですから、その経緯を組んでいます。MSCI KOKUSAIは、もともと年金運用で広く使われているかなり有名なインデックスです。MSCIインデックスについて詳しく書こうとすると、何篇も記事が書けてしまうので、今回は控えておきます。

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普通、投資信託は、金融機関やネット上で午後3時までに申込みをして、購入や売却をするのですが、その値段はその日の夕方にならないと決まりません。これは、市場が開いている間は、株式などの値段が刻々と変わるのに対し、投資信託時価は刻々と発表できないという物理的な問題から来ます。もちろん、午後1時に投資家から購入申し込みがあっても、それに応じて投信のファンドマネージャーが市場から株式を買い付けるのは物理的にできないという問題もあります。(追記:外国株に投資する投資信託の場合、購入や売却の値段は、翌営業日の夕方にならないと決まらないものが多いです。これは、海外の市場が日本よりも遅れて取引されるという時差から来ます。)

ETF(上場投信)は、その問題をクリアした比較的新しい金融商品で、刻々と値段が変わっていくので、自分が売り買いする商品の値段を把握したい人にはうってつけです。だからと言って、既存の投信が駄目という訳ではなくって、投信はそもそも長期投資向けの商品で、1日の値動きを許容できる人向けと言っても良いでしょう。

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海外株式のETFを売買するには、東証で扱っているETFが便利です。2010年12月現在、MSCI KOKUSAIをインデックスとするファンドは、2010年1月に登場した日興アセットのETF証券コード1680)と、2010年11月に登場した三菱UFJ投信ETF証券コード1550)の2つがあります。いずれも資産残高が20〜30億円と、この手の商品にしては規模が大きくなっていませんが、少しずつ育っている感じです。

MSCI KOKUSAIを構成する株式は50%超が米国のものです。それは、企業の時価総額をベースにインデックスを構成しているからです。MSCI KOKUSAIは、一昔前の先進国という分類で、アジア圏では香港、シンガポールとオーストラリアの株式が入っているだけです。

このことは、東証が開いている午前9時から午後3時は、MSCI KOKUSAIインデックスの時価評価を変える要素は為替以外はほとんどないということです。MSCI KOKUSAIの分かりにくいところは、ドルベースのインデックスが公表されているだけなので、円に換算するのは自分でやらないといけません。もっとも、その時間に米国経済に対して大きな影響を及ぼすニュースが出た場合には、価格も大きく動くのでしょう。

上記のいずれの場合も、ベンチマークの動きをリアルタイムで推測していくことが大変で、ETFそのものに対する需給関係で値段が決まっていく印象を受けます。例えば、ETFは個人投資による部分が大きくって、買い手の方が多いから、値段は常に高く取引されるなどという見方は、その流れの意見です。それでも、自分が買う値段と売る値段が確定するというのは、安心感につながりますが・・・。

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前置きが長くなりましたが、最近、コチラのサイトで、日興アセットのETF(1680)は先物によって株式の動きを捉えているのに対し、三菱UFJETFは、現物によって捉えていることを知り、自分でも確認しました。現物とは、まさに個別企業の株式を買うことです。先物は、日本の場合ではTOPIX先物というインデックスだけを売買する一般に大口の市場があって、しかも少ない資金で大きな元本を動かすことができる商品です。

先物は少ない資金で動かせるので、日興アセット(1680)のETFでは、なんと株式のポジションは100%近くを取っているにもかかわらず、日本国債の組み入れが35%もあります。三菱UFJの場合は、ほぼ全額が株式なので、そういうことは起きていません。

日本の財政破たんリスクという話が最近盛り上がっていますが、このことは、もし日本の国債金利が急上昇すると(債券価格は下落)、海外株式のETFの値段が下がる可能性を示唆しています。

財政破たんはすぐには起きないというのが、財政破たんを心配する人の間でも思われていることですが、10年単位であろう長期投資のETFにとって、このリスクは意識しておく必要がありそうです。

もともと、日本のカントリー・リスクを避けるために、外国株に投資している人もいることでしょう。比較的安全と思われている債券やキャッシュの運用について、細かく心配するのはどうかと思う人もいるかもしれませんが、米国のサブプライム・ショックのときに、ある機関投資家向けの商品で、キャッシュ運用のファンドの中に住宅債権が組み込まれていたという話がありました。一見安全そうに思える運用商品でも、その中身が何であって、どういうリスクを負っているのかを見ておくことは大事なのです。

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ちなみに、先物は株式の配当を得ることができないので、価格も現物から乖離します。その埋め合わせを国債金利から得ようとしているのでしょうが、MSCI KOKUSAIというインデックスはそもそも株式の配当を含んでいないので、ファンドの運用がどれくらい厳密に行われているのかを評価するのは、手間を要します。ETFの場合は、ファンドの運用精度に加えて、価格付けがどう行われているかという要素が加わりますので、厳密な評価は大変ですね。

でも運営コストが安く、ファンド・マネージャーの相場観(勘?)によらない商品であることから、癖が分かりやすいという意味で良い商品であることには変わりはないです。



(※)この記事は、いずれの投資手法、投資商品を薦めるものではありません。投資はご自身で理解し、取れるリスクの範囲で行ってくださいまし。




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