書評〜人生を豊かに歩むために大切なことどうでもいいこと


いわゆる自己啓発本ですが、他書と違うのは、より本質的な物事のしくみ、現実という動かしがたい事実、自分と自分以外との関連について、焦点をあてている点です。一歩引いて考えながら読むことをおすすめします。

著者のバックグラウンドが面白い。フランス人で、プロのマリンバ奏者で、能力開発のスクールを開き・・・。しかし、経歴に魅かれすぎると、本書のメッセージと逆行することになるので注意です。本書は、何かを成し遂げた人が書いた自己啓発本ではなくて、著者のデュボワ氏が、スクールを通じて数多く接した日本人について、フランス人(欧州人)の目線で感じたことが書いてあります。

もう少し正確に表現しようとすると、デュボワ氏はいろいろ成し遂げた人なのですごい人なのですが、そういう上から目線で書いたのではなくて、もっと客観的に多くの日本人が陥っている思考パターンや情報への接し方について書いているのです。

もちろん、すべてがすべての(日本)人に当てはまる訳ではありません。あくまでも日本で一般に、「こうだろう」と思われていることや、「無意識のうち」に支持されていることが、他国ではそうではないという見方が紹介されていて、どちらが良いのかは読者が判断するとして、その材料があるということは大変参考になるのではないかと思うのです。

その違いは、一言で言うと、日本人は他人にどう見られるかという考えで行動する人がいるのに対し、フランス人は、自分はこういう人だという考えで行動するのだと思いました。もっとも、これは僕が単純化しすぎた感想で、本書ではもっと多くの違いについてに書いています。

ちなみに、誤解を防ぐために言うと、「自分はこういう人だという考えで行動する」というのは、「自分勝手に行動する人」とは違います。僕の経験で、少なからず外国人(どこの国とは言いませんが・・・)と接してきて、「自分勝手に行動する外国人」がいるのは確かです。中には、日本では考えられないようなことをしでかす人もいて、その印象が強すぎて「外国人は自分勝手度が強い」と思っても不思議ではありません。

しかし、日本人が海外でしでかすことも、もしかしたら他国の人にとっては「自分勝手に映る」かもしれません。ある程度の違いは文化や習慣の違いから来ると思うので、そのあたりは差し引いて考えるくらいの度量は持ちたいものです。


では、どうしたら「自分はこういう人だ」と言えるようになれるのでしょうか?

これに対する本書のガイドは、僕なりに要約すると、「時間をかけて自分と向きあうこと」「自分の好きなことや将来やりたいことを行動しながら見つけていくこと」だと思いました。オチ的には「な〜んだ」と思うようなことかもしれませんが、それが現実でもあることに気付かされます。

そのため、「夢を持っていないのはおかしい」「まず夢を見つけてから現実に取り組もう」という雰囲気が強すぎるのは不自然であると著者は言います。『生きている大概の時間は迷子なのだ』そうです。

いろいろな情報に惑わされたり、他人とつい比較したり、無我夢中で仕事をしてきて幸せの尺度を見失ったり(ひと頃の僕です・・・)、夢を追い続けた結果それが夢かどうか分からなくなったり・・・、人生の悩みは人それぞれ尽きないと思うのですが、もっともっと自分という生き方や人間性に、素直に向き合って、直感で反応してみようという考え方だと思います。

僕自身、いつも人と違うことをやって、周囲をハラハラさせることが多いのですが、この本を読みながら考えてみると、共感できる部分が多いことに気付きました。それでも、いろいろなことに惑わされている自分にも気づかされました。世の中からたくさんの影響を受け、それ自体は悪いことではないのですが、影響を受けすぎている自分がいるのでしょうね。ときどき、振り返る仕組みを持ちたいものだと思いました。

人生を豊かに歩むために大切なこと どうでもいいこと

人生を豊かに歩むために大切なこと どうでもいいこと




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