書評〜世界が大切にするニッポン工場力

日本のものづくりについては、過去に何回か関連書籍を読んできたが、もっとも最近読んだものがメイド・イン・ジャパンは終わるのか?であった。

ざっくりしたおさらいをすると、半導体や携帯端末などではメイド・イン・ジャパンの力が失われたのだが、それは、会社や経済産業の構造が効率的になっていないという根っこの問題と、ものづくりの国際化(規格化)やIT化によって日本が得意であった摺りあわせ型の技術の価値が下がったことに問題とによるというお話だった。

しかし、摺りあわせに頼らなくても、いかなる製造分野において、他国や他社ではできない競争優位性があれば、それらの問題の影響は小さいはずだ、と思ったのであった。

本書は、そんな具体例を12件取り上げている。産業分野や会社の規模、設立時期などはまちまちだが、いずれも独自性の高い技術を持ち、世界で存在感をあらわしている企業(経営者や技術者)の話である。

1つ1つのお話には、技術者や経営者のこだわりや誇り、使命感や意地などが感じられ、同時に惜しまない努力や自由なひらめきを活かす力からはパワーを得ることができる。それはそれで良い「お話」なのだが、「日本が・・・」と一括りにするものは特に提示されず、実際にはそれぞれの創業者や経営者が自らの信念に基づいた結果でしかないと思い至るのだった。

「日本が・・・」という部分を強いてあげれば、日本にいる消費者や発注者の要求が高く、それによって技術が磨かれていくという様子だろう。高度成長を先に遂げたからこそ持てる要求というのが、社会のあちらこちらにあって、それに地道に応えていく技術や企業が、グローバルにも大切にされるのであると、改めて思う。

このことは、何も「消費者の目が厳しい」と言いたい訳ではない。消費者の目が厳しいのは確かではあろうが、それは口うるさいという意味ではなくって、もともと日本の社会において、安全や配慮、美しさや機能性といった細かな部分まで、こだわっていくという価値観があるという意味だと思う。

例を挙げると、あまり詳しくは話さないが、他国の製品やサービスを得る場合、「粗悪品をつかまされる」リスクは少なからず負っているのではないだろうか。日本にも酷い商品やサービスはあるが、他国ほど警戒しなくてもよい。

そう考えていくと、ものづくりの会社が海外に出ていく様子を見るのは辛い限りだが、日本のマーケットを伝統的な高いレベルに保っておくというのは、1人1人の意識と行動によって達成できるのである。

世界が大切にするニッポン工場力

世界が大切にするニッポン工場力




こちらへも遊びに来て下さい。金融の10番は日本人に任せろ!
こちらへも遊びに来て下さい。ケロケロケロっ記(音楽コーナー)