書評〜やめないよ(カズの日経コラム「サッカー人として」より)

このブログでも、日経に載っているカズのコラムについて書いたことがあります。彼の考え方や生き方は、大変に刺激になるし、前に進む勇気をもらいます。

そんなカズのコラムが2006年から2010年まで、一気に読めるなんて素敵ではありませんか。話題は、生き方や考え方だけでなく、サッカーそのものについても触れていて、サッカー好きにはたまらない内容でした。サッカーに興味がない人にとっては、やや散漫な感じを受けるかもしれないので、事前にご認識ください。

カズは現役選手だから、「選手としてのカズの生き方は・・・」というコメントの書き方になるのですが、プロフェッショナルとして極めて厳しい考え方を持っている一方で、年齢や経験に応じた役割については不器用だと僕には感じられました。

その不器用さとは、カズはキャプテンになっても、世間一般が抱くようなキャプテン像に応えられない点にあると思ったのです。不器用というと聞こえが悪いかもしれませんが、例えば、近年のカズが古田元選手(ヤクルト)のように振る舞っているようには思えないですし、井原元選手(横浜マリノス)のようでもないですよね。

不器用とは主観的な表現でした。客観的事実として、カズは若手に見本を見せていますし、現役選手が自分のパフォーマンスにこだわれなくなったら、そもそも選手として失格です。むしろ、カズの優先順位の付け方が良いという考え方もあります。

この点は彼も本書の中で書いていて、ブラジルでは自分のことは自分で面倒を見るのが当たり前で、「それができないようなら自然と淘汰されてしまう」、キャプテンがチームをまとめる必要があるときはチームが上手くいっていないときで、「そんなときは個人のプロとしての意識が低い」と、いうようなことを言っています。

サッカーのように、しかもそれがブラジルのサッカー界のように、次に控える人材が豊富な業界では、カズのような考え方は良いのでしょう。僕は、じゃあ日本のサッカー界は?とか、日本代表における長谷部の役割との関係は?について、ここで書くつもりはありません。ブラジルと日本は違いがあって良いし、カズもそうだと思っている部分です。

僕の主観で「不器用」と呼んだカズを、どこかでカッコ悪いと思う人もいるかもしれません。この本のタイトルだって「やめないよ」だから、引き際がどうのこうのと思う人もいるかもしれません。しかし、僕はそんなカズの考え方をこの本で知ったので、頑張って欲しいと思います。

日本の会社組織では、人材は限られるから、カズの考え方で上司役を務めあげるのは難しいでしょう。しかし、若いプレーヤーには、選手としてのプロフェッショナルとは何かについて、カズから多くを学べるはずです。そして、プロとして自立するという経験がないと、プロを育てるマネージャーにはなれないと僕は考えています。

 ※ ※ ※ ※

カズが辛いトレーニングをしてでも現役にこだわる理由は、いまだに成長を感じるということと、その成長を感じるための努力を惜しまないことと、なによりサッカーが好きだということになるのでしょう。恵まれている、うらやましい、と嫉妬してしまいそうですが、どんな仕事でも、どんな生活でも、どんな年齢でも、日々成長することを感じることは大切なのだということを感じました。

言い訳はいくらでもできるけれど、努力をしないで言い訳ばかり言うのは、人生の楽しみ方を捨ててしまっているようなものです。努力は辛いと思うことも多いけれど、そんな中でも日々の変化を感じ取り、少しの変化でもそれに出会う瞬間を楽しみながら努力することって良いですよね。

伸び盛りの現役スポーツ選手から得る「夢」もいいけれど、カズのような現役選手から得る「夢」もまた、希望を与えてくれるのです。

やめないよ (新潮新書)

やめないよ (新潮新書)




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