お客さんから学ぶ

僕の業界、資産運用業では、3ヶ月に1度、法人のお客さまに自分たちのサービスの結果を、直接会って報告する決まりになっている。

決まりと言っても、「会って報告すること」については、法律で求められているのではなく、慣行である。サービスの大部分を占めるのは、運用の結果、すなわち運用パフォーマンスである。

この運用パフォーマンスというのは、プロがこういうのも違和感を覚えるかもしれないが、なかなか説明が難しい。たとえば、金融市場の動向によって、パフォーマンスが安定しないことがある。それを安定させるのがプロの仕事と言われるかもしれないが、市場の動向に合わせて売買を繰り返すと、売買にかかる手数料ばかり払う羽目に合い、長い目でみたらデメリットが大きくなることが多い。しかし、それに対するお客様の認識や反応は、さまざまである。

僕は、この業界での仕事は長いのだが、技術畑が長かったので、今までは限られた機会でしかお客さまと接することがなかった。いつしか、チームをまとめるリーダーの仕事、そして会社の経営に絡むことになったのだが、お客さまへのコンタクトは、専門職である営業担当者が担っていたのだ。

しかし、この1週間は、お客様にサービスを組織的に提供することを徹底するために、運用部の経営陣に所属する僕が、お客さまと接することを増やしてきた。

まだ始まったばかりの試みであるが、この1週間で、当社の業界の中での位置、サービスの質、顧客満足度上の課題、当社への期待、今後のあるべき姿など、いろんな角度からの情報を得ることができた。厳しいご意見も、激励も頂けた。お客さまとの対話の期間は、まだまだ続くが、こうした情報を1つ1つ経営に活かしていこうと考えている。

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3ヶ月に1回、定期的なフィードバックを得るというシステムは、他の業界を見渡してみると、珍しいことなのかもしれない。個人が相手の商売だと、その規模にもよるが、同じ人からの定点観測は得にくいので統計的な対応がより強くなるだろうし、法人が相手であっても、僕が属しているような技術系とか商品開発の部門が、実際に使っているユーザーの意見を定点観測するのはそう容易ではない。

こうした取り組みを、組織的に効果を上げることの難しさも感じはじめた。営業担当者は、比較的短期的な視点での応対に陥りやすい。それはそうだろう。それによって、契約が取れたり、解約になったりする。一方で、商品開発の部門は、商品の良さを信じるあまり、そもそものスペック・設計に対する疑問を抱きにくい。それもそうだろう。短期的かもしれぬ問題に反応しすぎると、却って商品の質が落ちることもありうるのが金融商品でもある。

こうした問題意識を持って仕事に取り組んでいる担当者も多いはずだが、それを大きな組織の中で、効果的に吸い上げて次に向かっていくのは、骨の折れる仕事だ・・・。

また、1つ宿題を頂いたということになります。




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