超簡単 お金の運用術

著者は山崎元さん。直接お話をしたことはないのですが、私が最初に資産運用の仕事に就いたときの部署に、ちょっと前までいらしていたとあって、山崎さんはこういう人だというのをずいぶん聞かされてきたし、ずいぶん昔の著書「ファンドマネジメント―マーケットの本質と運用の実際」ではっきり物事を言う人だなあ、という印象を持っていました。

この本もはっきりした主張が展開されている。基本的なメッセージは、以前に紹介した竹川さんの本と同じ。自分の仕事に忙しい人は、アクティブ運用や毎月分配型の投信などに手を出さず、シンプルに内外株のETFかインデックス投信(販売手数料や信託報酬の低いもの)を組み入れたらよろしい、と。私も全く同じ意見です。

竹川さんの本よりETFについて書いている頁があるので、両方組み合わせて読んでみると良いかな。資産運用や株式投資、FXなどの言葉におどらされる前に、自分が必要とするであろうお金、そして自分という資本とのバランスを考えるきっかけになると思います。僕が好きだったのは、周囲の意見や儲かった話に耳を傾けるのではなく、まずは自分で考えてみましょう、というメッセージです。

そういえば僕も若かりし頃、友人が為替でもうかったという話を聞いて、外貨預金を始めた経緯があります。為替はゼロサムで、かつ金利と為替は裁定取引が働きやすいから、理屈では外貨預金はリターンを産まないと思っていてもです。結局、仕事が忙しく、為替動向を逐一追えなくなってしまったから、ずーっとそのままにしています。金利差分くらい円高になったから、結局トントンかな〜。

こういうのが一番良くないのでしょう。もし、短期や中期でお金を運用しようと思ったら、それに見合う時間を投資しないといけない。山崎さんの本では、自分の時給が幾らで、その時間に見合うリターンが得られるかどうか、という視点を常に持っている方のようです。この発想はずーっと持っておきたいですね。

こうして見てくると、長期投資ばかりを勧めているようですが、山崎さんはギャンブルの効用にも触れているところが面白い。ギャンブルは知的なゲームであると言う点だ。しかし、ギャンブルは常に寺銭がかかり、胴元が儲かるように出来ているから、期待値は常にマイナス。そのマイナス分は消費として覚悟しておいた方が良いということである。これだけ楽しめたから良いかと思って止められるか、それとも取り返そうと思って依存症になるかは大きな差だ。ギャンブルは知的なゲームであるならば、その付き合い方はさらに知的な判断や分別というものが必要だということだろう。短期の投資も、似たような要素があると思ってよい。

超簡単 お金の運用術 (朝日新書)

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