経済予測脳で人生が変わる

経済学に関する知識を持つことは不可欠だけれども、それだけでは予測はできないと主張している本。著者の中原さんは歴史学、哲学、心理学を取り入れ、物事の本質を理解し、その変化を嗅ぎ取ることから予測に活かしている。

では、どうしたら物事の本質を理解できるか?この本には「こうすればできる」というようなHow toは当然ないのだが、何故ならそれは簡単なものではない。

幾つか興味深い指摘があった。これらは本質を得るための手がかりになるだろう。

  • 他の学問や知識を動員し、大局的に物事を見る
  • 経済学や他の専門家の意見に頼るのではなく、自分で考えて本質を探り続ける
  • 考えることは鍛錬であり、続ければ続けるほどできるようになっていく
  • 事実と意見をふるいにかけ、事実に対して思考をめぐらせる

自戒を含めて話すと、プロの投資家でさえ、やることが多くなっていくと、証券会社のアナリストのレポートを読んで知恵をつけたり、そのレポートを出発地点として自分の考えを足していくことがある。著名なアナリストの話は、ストーリーがよく練られているため分かりやすいし面白いのだが、話に入り込みすぎると、事実の羅列を理解したり疑問に思うよりも、ストーリーそのものや結論に興味が向かってしまい、自分で考えなくても分かった気になってしまうことがある。著名なアナリストほどプレゼン能力が高いゆえに、これは危険だ。

新聞や雑誌にも、署名入りの論文やレポートがあるので、ついつい追っていってしまう。特に、自分の専門外のところになればなるほど…。しかし、予測脳は一日にして成らず、近道はないのである。自分から事実を選り分け、考えることを続けていかなければ、そうした思考力は身につかない。

このブログでは、忙しくかつ投資が本業または趣味ではない個人投資家には、インデックス投資を薦めていて、その考えは今日の記事によっても変わるものではないのだが、だからと言って大局的または鳥瞰するレベルでの予測をやらない理由は何もないし、それを投資に活かしても良い。

投資の観点からは長期の予測に絞るべきで、予測に自信がなければ投資対象は変えなくても良い。しかし、予測という名の思考を行うことで、今の資産の状況が理解できるはずだし、理解できなくてもその理由を探るだけで、今の資産の状況を受け容れることだってできるかもしれない。

もっとも、予測を行うことは危険も伴う。人間は、危険回避的に生まれつきできているという説があり、長期のリスクプレミアムを取りに行こうとするインデックス投資なのに、「もう売ろう…」という逆の投資行動を誘発されることが十分にありうる。

一方で、多くの人の仕事や生活は経済と無関係ではないはずだから、ある程度の予測はやはり必要ではないかという見方もある。これは人生において、一つの意思決定のポイントだ。

インデックスを薦めるポイントに、「忙しい人は本業に投資をする(時間をかける)方が良い」があった。もし本業が経済との関連が強いのであれば、予測を仕事と資産運用に取り入れつつ、しかし短期の判断で労力やコストを奪われないようにする、というのも一つの考えである。

ちなみに、「投資はインデックスで良いのですよ」と言われれば余計なことは心配しなくてもよいし、そういう意見にすがることで自らの行動を正当化することができる。しかし、本当にリスクプレミアムが存在すると信じ、インデックスというバスケットの中には腐ったり消えたりする卵があっても気にしないという覚悟がなければ、インデックスに頼るのは危険ではないだろうか。インデックス投資においても、本質の理解と、それを選択するというリスクを背負うのである。

経済予測脳で人生が変わる!―仕事も投資も成功できる「起こりえる未来」の読み方

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