前例を作った公務員

この前の日曜日に、TBSの朝の番組で、正確なタイトルは覚えられなかったが、「日本中のはみ出し公務員」を紹介するコーナーがあった。なかなか良い企画だと思った。

なぜなら、普通に考えればこのコーナーに出てくる人は、公務員の枠にとらわれない仕事をする人で、むしろ「そっちの方が住民意識や民間事業に近い」のだ。同局が昼にやっている「噂の現場」の逆パターンである。「噂の現場」では、責任の所在があいまいな話が、役所絡みでたくさん紹介される。つまらないテレビ番組が多い中、これらの地道な取材をもとにした報道はどんどんやってもらいたい。

今週の「はみだし」さんは、石川県の神子原(みこはら)という地域の役場にお勤めの方で、限界集落(人口の半分が65歳以上)から脱することに成功したという。

例えば、コチラのニュース記事にあるように、名産品である「米」の知名度を上げ、農業を農協頼みの受身で行うのではなく、経済的に自立させたことで知られる。それだけでなく、農業体験の学生を集めて町に活気を取り戻したり、空き家を農業を条件に安価で貸して若い人を呼び寄せたり、農業技術の向上に一役買ったり、とあらゆる手を駆使していた。

国の補助金も利用したようだが、国が最初から助けてくれるものではなく、町が自発的に申請しないといけない。その書類準備が、ものすごく大変らしい。しかし、町役場が、資金のきっかけを作り、農作物を直販する販売所は民間で運営、つまり赤字が出たら株主(有志の住民らしい)の責任であるという厳しさも伝えていった。

結果、農作物は売れ、若い人も徐々に集まり、限界集落と定義される状態から抜け出すというすばらしい物語(実話)である。

笑うに笑えない話となった「ふるさと創生事業(リンク先はウィキペディア)」はすっかり昔話となった。こちらの方が、地元の苦労は大きいけれど、地方とりわけ過疎の農村・漁村を抱える地方自治の形を示している。

公務員に限った話ではないが、中央や上層部が「こうだ」と決めて結果が出るマーケットというのは特殊かつ稀である。だからと言って、権限委譲をして地元や担当者が政策や戦略を実行していくというのは、並大抵のことではない。神子原のケースでは、限界集落に陥ったという「後がない状況」で変革が行われたのだが、危機感がまだ低い地域では、行動に移すのはなおさら難しいだろう。

実行に際しては、資金面が大変だと思うが、少し調べてみると、農商工支援ファンドが各県にあることを知った。例えば、石川県のケース。どうやら、全国的な取り組みとして、中小企業基盤整備機構という独法(独立行政法人)がやっているらしい。1県あたり数十億円というファンドなので、かなりの大きさである。

公務員について、やや辛口な書き方になったが、僕の友人にも公務員はたくさんいて、みんな本当に遅くまで働いて苦労している。公務員すべてが問題なのではなくって、リスクが取れない組織の仕組みに問題があるのだろう。それは、僕が勤めたことのある日本の民間会社でも見られたことで、その後に勤めた外資系の会社と比較すると、責任を取るという上司の力量の差であるような気がしてならない。




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