運命の法則

コーチに薦められていた天外伺朗さんの「運命の法則」をホノルルから帰る飛行機の中で読んだ。沖縄やホノルルなどの夏のリゾート地は家族連れが多く、この日の飛行機もあいにく小さい子がいる家族のすぐ近くに座った。子供が元気で、もっとはっきりと言うと、うるさいのに親が注意しないという迷惑な家族で、集中して本を読む環境にはなかったが、ビーチで読書と意気込んで寝てしまうのに比べ、一冊を一気に読み終える絶好の環境だったので、これも何かの縁だと思うようにしよう。

天外伺朗さんの本は前にもコーチに薦められて読んだことがある。実は「運命の法則」はかなり前から薦められていたのだが、たまたま書店の書棚にあった他の本を読んで、その本が参照していた別の本の方へ関心が移ってしまった。

「運命」と書くと、なんだか胡散臭い香りがするが、著者もはっきり述べているように、「運命の法則」は胡散臭い。しかし、心理学の側面や社会学的な解釈、そして先人の知恵や伝えなどを行ったり来たりしながら、幸運を引き寄せるにはどうしたらよいか、どういうことを避けるべきか、どういう心構えでいればよいか、について書いている。

天外さんはソニーが過去に最も勢いがあった時代の開発者であり経営者で、そういう意味では極めて理論的な人だ(会ったことはないが、文章からするときっと“そう”だろう)。僕も人から理屈っぽいとか、緻密と言われるほど論理的に考え行動するタイプなので、「運命」とか言われると、「古い歌の歌詞でもあるまいし」と一笑してしまう。しかし、不思議なことに天外さんの言いたいことは分かった気がするし、実際、本にもあるような説明しにくい体験を僕自身も経験したことがある。

この本では、天外さんが他の著書でも触れている、「フロー理論」(心理学でチクセントミハイが提唱)のことが書いてあったり、もっと大きな運命の流れについて書いてある。フローとは、何かに集中して驚くような成果が出せてしまう状態のこと。個人だけでなく、チームでもその状態になることがある。大きな運命の流れは、ここでは説明しにくいが、いろいろなことや、過去の準備が、あたかも1つのことにつながっているように感じられること。これらと自分の経験については、機会があればここかどこか他のところで紹介したいと思う。

とても意味深いのは、僕が会社を辞めた理由についてである。僕は、その会社ではフローの状態をもはや作れないと思った。そして会社を辞めざるを得ないと思った出来事も、一見不運ではあるが実はそうではなくて何かの意味があると思っている。ここではこれ以上は詳しく書かないので、行間がありすぎて伝わりにくいが、僕が単に不満があって会社を辞めたということではないことが、分かって頂ける部分ではないだろうか。

ちなみに、この本は胡散臭いと散々言ったものの、自己啓発からチーム・マネジメントに関するしっかりとしたビジネス書である。報酬や地位、名誉などによって動機付けられる仕事は、「外発的報酬」によるものである一方で、喜びや楽しさに基づく仕事は「内発的報酬」による仕事だと言う。仕事に求めるものや、ライフとワークのバランスは人によって違うので、他の人には強要したくないけれど、僕は仕事をする以上は良い仕事をしたいし、人ができないようなことをやっていきたい。つまりは、仕事をすることや選ぶことに対して自らの関与が必要な訳で、そんな人にはこの本を薦めたい。

理屈が通る言い方をしてみよう。物事が上手くいかない時はたくさんある。それをどう意味づけし、次の準備に備えていくか、次の判断が行える状況にしておくか、の考え方を知って行動してみよう。そうすることで、上手くいかないことに固執して何もできないよりは、次の機会に向けた準備ができ、機会を見つける直観や行動を促す力となり、それらの結果として運が引き寄せられるということである。

運命の法則 (ゴマ文庫)

運命の法則 (ゴマ文庫)




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